INTERVIEW
ベル「続々・鐘が鳴ったら事件が起きる」
2019.3.15

「歌謡サスペンス」を掲げるベルが、バンドとして大きな成長を見せつけたNEWミニアルバム『続々・鐘が鳴ったら事件が起きる』をリリースした。
結成5周年を迎えるにあたり大きな壁を乗り越え、今一度「ベル」というバンドを“再定義”した今作は結果としてバンドにとっての原点回帰であると同時に、未来に向けて大きな進化を遂げる作品となった。
深みを増し続ける4人の最新の言葉を存分に味わってもらいたい。
インタビュー・文:二階堂晃
結成5周年を迎えるにあたり大きな壁を乗り越え、今一度「ベル」というバンドを“再定義”した今作は結果としてバンドにとっての原点回帰であると同時に、未来に向けて大きな進化を遂げる作品となった。
深みを増し続ける4人の最新の言葉を存分に味わってもらいたい。
インタビュー・文:二階堂晃
『このままではこの先5年、10年と闘っていくことは出来ない』
――約9か月ぶりとなる新作『続々・鐘が鳴ったら事件が起きる』をリリースするまでは、ベルにとってどんな期間でしたか?
――具体的にどういう苦しさだったのですか?
――何がきっかけでその自分と向き合うことになり、そして答えを見つけたのでしょうか?
――夢人さんはベルの5周年と時を同じくして、彩冷えるの復活という大きなトピックを迎えたタイミングであるかとも思います。
――夢人さんと共にメインでソングライティングを手掛けている明弥さんはいかがですか?
――ライヴでの経験を踏まえて明確なベルとしてのスタイルが見えた上での制作だったということですね。
――そして正人さんはセッションなどを通じてベル以外の環境でドラマーとしての場数を踏んだ一年でもありました。
――外部で一緒に音を出したミュージシャンの方々とベルのメンバーとで大きな違いは感じましたか?
――今作は「ベルらしい作品」という言葉以上に的確な表現が見つからないほど、ベルらしい作品だと思います。
――先程正人さんも「再定義」の名前を挙げましたが、ここまでアッパーなファンク・ナンバーは過去のベルには無かったのでは?
――確かに、「自我の水槽」で90年代ヴィジュアル系の激しい曲調ならではのビートを取り入れていることは大きな驚きでした。
――歌詞に関しても、作品全体を通じてハロさんらしい情緒溢れる描写とシニカルなメッセージが貫かれています。
――そんな心の内面を切り取った「自我の水槽」から一転して、「夜行列車」では物語を描くことに振り切った歌詞が印象的です。
――そして先程も話に挙がった「再定義」へと続きますが、これはやはりベルというバンドの“再定義”を掲げた歌詞なのでしょうか?
――と、言うのは?
――続く「やってないわ」では、ベルのライヴでの定番ナンバー「やってない」と同じサビメロと歌詞をぶつけてきました。まさかここまで攻めてくるとは驚きです。
――歌詞は「いじめ」がテーマですか?
――ということは、もう「やってない」はしばらくライヴで演奏することはないのでしょうか?
――今後のライヴがとても楽しみです。そして、「ルイスキャロル」ではハロさんがファンタジーの世界を描いたことが新境地です。
――怖いですね。そして、「三丁目ブルース」では明弥さんが哀愁溢れるブルースの情景を描いています。
――初めて聞きました。
――そして『続々・鐘が鳴ったら事件が起きる』は疾走感溢れる、別れを歌った「サクラグラフィー」で締めくくられますが、個人的にはベルの中で1、2を争う名曲だと感じました。
――“鐘=ベル”と捉えることもできますし、本当にいい言葉ですね。
――『続々・鐘が鳴ったら事件が起きる』は、是非ともベルを知らない人にはもちろん、これまでのベルを知っている人のイメージを一新できる作品になりましたね。
――最後に、ベルの活動も5周年目に突入して『続々・鐘が鳴ったら事件が起きる』を完成させた今の気持ちを聞かせてもらえますか?

ハロ:活動5周年を迎えるまでの4年目の活動が、個人的に「これからどうしていこう」という風に一番悩んでいた時期でした。何が正しくて何が間違っているか分からなくなっていて。「このままじゃあベルの5周年を迎えられないぞ」というところまで考えましたし、苦しい時期でしたね。


ハロ:ベルのボーカルとしてどうあるべきか、その頃はすごく悩みましたね。言ってしまえば自分の内面よりも外からの見え方を優先して考えていたことに気付いたんです。そしてこのままではこの先5年、10年と闘っていくことは出来ないぞ、とも思って。


ハロ:それはやはりメンバーの存在です。僕が伸び悩んでいる部分はメンバーも分かっていて、色んなアドバイスをメンバーからは常にもらっていたし、5周年に向けてこの先どう闘っていくんだっていう、これまでしなかったような話もツアー中にするようになったんです。そんな中で迎えた5周年のワンマンがメンバー全員が今までで一番良いライヴだと思えて。5周年を迎えて、やっと一つの壁を越えられたなっていう感覚が今はあります。

夢人:5周年を目指すにあたって、改めて「ベルとは?」ということを考えた一年でした。ベルはどういう風に外から見られているんだろうか? っていうことを見つめ直した上での原点回帰というか、「歌謡曲である」という点を押し出していこうという風に考えて。今回のタイトルを『続々・鐘が鳴ったら事件が起きる』としたのも、初心に返りたいなっていう気持ちからですね。


夢人:彩冷えるの復活は、自分の引き出しを広げる上で今作にもいい影響になったなと思いますね。両方での相乗効果があったこそ一人のミュージシャンとしてレベルアップ出来ていると思うし、彩冷えるでの動きに関して許してくれたメンバーには感謝しています。


明弥:昨年リリースした『JUKE BOX』『夏風』はその時自分たちのやりたいものをやるというスタンスでリリースしたんですか、その上で去年の夏にたくさんのバンドと一緒にイベントツアーを回ったことで、やはり自分たちの最大の武器は「歌謡曲である」ということに気付いたんです。


明弥:そうですね。ルックスに関しても、最初にみんながアー写を見た時にイメージが脹らませやすいものを今一度提示したいと思って、色んなことを経験してバンドとしての強みが増した今だからこその昭和歌謡の雰囲気が伝わるものになるよう意識しました。


正人:メンバーの中では一番外でプレイすることが多かったですね。初めての人と限られた時間の中でメンバーとはまったく違ったグルーヴを生み出さなきゃいけないので、ドラマーとして考えることは多かったですね。そういった中での成長があったからこそ、今作の「再定義」のようなグルーヴ感を前面に押し出す曲が出来たのかなと思います。


正人:ドラムの方を向いて演奏する割合が、ベルのメンバーと他の人たちとでは全然違うんです。僕はやっぱりこの人(明弥)を見ながらプレイするからどうしても他の人と明弥を比べちゃうし、ベルに帰ってきた時の安心感ってすごく大きいものだなって。
『例えるならポケモンが進化する、みたいな』

夢人:逆にめっちゃ予想と期待を裏切られたって思ったでしょ(笑)? 原点回帰の歌謡っぽくて、それがパワーアップしてて演奏も難しいもので、というイメージで曲はあっきー(明弥)と僕で書いていったんで。

明弥:新しい挑戦はしつつも、軸は絶対にベルの根本からブレちゃいけないと思って作っていたんです。例えるならポケモンが進化する、みたいな(笑)。

夢人:あっきーはやりたいことが溢れてるから、レコーディングも大変なんです。毎回キメが違ったり。どの曲もシンプルなようでメチャクチャ凝った作りになってるし、「再定義」なんかはここまでカッコいい曲になるとは予想してなかったですね。


夢人:さすがにここまでスゴいのは初めてです。レコ―ディングしながら「僕は今何をやらされているんだ?」みたいな(笑)。

明弥:僕の中で、「ユニゾン(同じフレーズを違うパートが同時に演奏すること)」がテーマとしてあったんです。ユニゾンがバッチリ決まった上でバンドのグルーヴを出せることが一番奥深いことだと思っているので。

正人:ドラムも、土台となるビートとテクニカルなフレーズの黄金比率を狙うことを何よりも意識しましたね。

ハロ:黄金比率! 料理人みたいだ(笑)。

正人:ドラムは「再定義」とリード曲の「自我の水槽」が特にやり甲斐がありましたね。特に「自我の水槽」はテンポがこれまでのベルで一番速いので疲れます(笑)。

夢人:昔の黒い系のヴィジュアル系みたいなドラムですよね。


明弥:「スタスタ系」のリズムってこれまでにやったことないなあと思って。とはいえ昔の黒い系みたいなことをそのままやっても意味がないし、そこはベルらしく料理することを心掛けて。

ハロ:ベルの黄金比率でね(笑)。リズムは新しいことをやっているのに、メロディやフレーズにまったく違和感ないのがいいですよね。
『自分自身も再定義しようよってことを言いたくて』

ハロ:まず「自我の水槽」の歌詞を書くタイミングで、自分と向き合う時間が多かったんです。そんな中、あっきーのデモを聴いて、理性が本能を抑え込めなくなる瞬間を書こうと思ったんですね。「いっぱいいっぱい」っていう言葉があるように、自分自身の心のキャパシティが溢れる瞬間を“水槽”という言葉に例えました。


ハロ:“カシオペア”って、実際に上野から札幌の間を走っている夜行列車の名前なんです。ずっと温めていた題材のひとつで。この歌詞は歌謡で歌われる別れの場面を描き切ることに徹しました。


ハロ:お客さんにとってのベルとか、ベルを観たこともない人が抱いているベルのイメージとか、そういうものを一度“再定義しようぜ”っていうことなんですよね。知ったかぶりで物事を定義している人っていっぱいいると思うし、自分自身に対してもそうだと思うんですよ。


ハロ:「自分はこういう人間だから」とか「自分はこれしか出来ない」みたいに自分のことを勝手に決めつけて定義しちゃいがちじゃないですか。そうやって可能性の幅を狭めるのってもったいないし、そんな自分自身も再定義しようよってことを言いたくて。


夢人:「やってない」がとにかく毎回盛り上がるんで、じゃあそれの最新版をやってやるわっていう気持ちで作りました(笑)。

ハロ:過去の曲が一番盛り上がるバンド、というイメージを払拭したかったんです。

夢人:タイトルの候補、色々あったんですよ。「やりました」とか「やってないです」とか「やってねえよ」とか、あげく「やってないⅡ」とか(笑)。


ハロ:そうです。「やってない」で描いたクラスのいじめのその後を書こうと思って。いじめって特定の誰かを攻撃したいというよりかは、集団内の誰かを標的にしたくなる人間の心理の表れだと思うんです。「やってない」でいじめられていた男の子が転校してしまった後に新しくクラスの標的になった女の子の目線で書きました。


夢人:そんなことないですよ。「やってない」と「やってないわ」を続けてライヴで演奏したいですね。

ハロ:絶対、ベルのことを知らない人でも気になっちゃうと思うんですよ。


ハロ:これまではベルではリアルな歌詞を意識していましたけど、ここまで活動を続けてきたことで、僕なりのダークファンタジーも今後はベルとして書いていけそうだなと思って。ベルは「歌謡サスペンス」なんで、サスペンス要素のあるテーマにしたかったんです。ここでは自分の攫ってきた女の子を自分の創った物語の中に閉じ込めてしまう男、というストーリーを描きました。


明弥:ここまで「歌謡曲」をテーマにやってきた中で、ムード歌謡っていうジャンルをこれまで形にしてきたことが無いことに気付いたんです。フランク永井さんとか「伊勢佐木町ブルース」とか知ってますか(笑)?


明弥:そういう自分が好きなムード歌謡の、現代にも通じるような昭和のもの哀しい恋愛を描きたかったんです。“三丁目”っていうワードが、なんだか自分の中でしっくりきたんですよね。

ハロ:なんなんだろうね、“一丁目”でも“二丁目”でもなく“三丁目”がしっくりくるのって。

明弥:“二丁目”だと、ちょっとコッチ系(新宿二丁目界隈)の恋愛になっちゃうね(笑)。
『深みを増し続けるベルのところにみんな来ればいい』

明弥:嬉しいですね。ライヴのクライマックスで花びらが舞っているのが似合いそうですよね。小細工なしでどれだけいいメロディを届けられるかっていうことだけを考えながら作りました。

ハロ:ベルって今まで春をテーマにした曲が一曲も無くて、タイミング的にも絶対に春の歌詞を書きたかったんです。今回歌詞の中に別の作品を引用するっていうアプローチをどうしても取りたくて、映画の「秒速5センチメートル」がすごく好きなこともあって、あえて“秒速5センチ”っていう言葉を選んだりもしてます。後は、“鐘霞む”っていう俳句の春の季語を使ったりもしていて。


ハロ:ミニアルバムの最後に相応しい曲になったと思います。


明弥:改めて、色んな人に聴いて欲しいですね。うちは間口が広いバンドだと思いますし。曲やバンドの世界観はもちろん、ベルにはイケメン(正人)もいるし、面白い人(夢人)もいるし、歌上手い人(ハロ)もいるし、何がとっかかりでもいいんで(笑)。


明弥:バンドって刹那的な一瞬の輝きの美しさもあると思うんですけど、それよりもベルは長く愛されるバンドでありたいなと思います。この先どんなことが起こるかは分からないですけど、安心して見ていられるバンドでいたいですね。気が向いたらいつでも僕らの曲を聴いて欲しいし、願わくばそこからライヴに足を運んでもらえたら。

正人:今って、30秒あればインターネットでバンドのことを調べられるいい時代だと思うので、少しでも気になったらまずは僕らのことを調べて触れてみて欲しいですね。そこから先、ベルがあなたの趣味や好きなものになれたらこんなに嬉しいことはないと思うので、まずはどんな形でもいいので僕らに触れて欲しいなと思います。

夢人:うん、そうだね。食わず嫌いせずに、パッと見の印象だけじゃなくて、作品やライヴに触れて判断して欲しいです。

ハロ:「歌謡曲」というスタイルでは、このシーンにおいてベルは一番のバンドだという自負があります。もし今のヴィジュアル系に物足りなさを感じていたら、年々新しい作品を生み出して深みを増し続けるベルのところにみんな来ればいいですよ。

RELEASE
ニューミニアルバム「続々・鐘が鳴ったら事件が起きる」
2019年02月20日 Release!!
2019年02月20日 Release!!
![]() |
【A type】 S.D.R-343-A / ¥3,024 (税込) [CD] 01. 続々 鐘が鳴ったら事件が起きる 02. 自我の水槽 03. 夜行列車 04. 再定義 05. やってないわ 06. ルイスキャロル 07. サクラグラフィー [DVD] ・自我の水槽 MV+メイキング |
![]() |
【B type】 S.D.R-343-B / ¥2,700 (税込) [CD] 01. 続々 鐘が鳴ったら事件が起きる 02. 自我の水槽 03. 夜行列車 04. 再定義 05. やってないわ 06. ルイスキャロル 07. 三丁目ブルース 08. サクラグラフィー |
LIVE INFORMATION
ミニアルバム発売記念6都市7公演春季ワンマンツアー「誰ガ為ニ鐘ハ鳴ル」
2019年03月09日(土) 心斎橋CLAPPER
2019年03月10日(日) 名古屋ハートランド
2019年03月16日(土) 福岡Utero
2019年03月21日(木・祝) 仙台enn 3rd
2019年03月23日(土) 札幌SUSUKINO810
2019年03月24日(日) 札幌SUSUKINO810
ミニアルバム発売記念6都市7公演春季ワンマンツアーファイナル「誰ガ為ニ鐘ハ鳴ル-千秋楽-」
2019年03月29日(金) 高田馬場AREA
ハロ生誕記念公演 「今も揺蕩う夢の中で僕らは希望に手を伸ばす。」
2019年05月18日(土) 池袋EDGE
2019年03月03日(日)ZircoTokyo
2019年04月03日(水) HOLIDAY NEXT NAGOYA
2019年04月04日(木) 心斎橋VARON
2019年04月16日(火)渋谷REX
2019年04月23日(火) 池袋EDGE
2019年05月30日(木) 仙台MACANA
2019年06月02日(日) 大阪RUIDO
2019年06月03日(月) 名古屋HOLIDAY NEXT
2019年06月09日(日) 高田馬場AREA
ベル PROFILE
※画像クリックで大きい画像が表示されます。-
Vo:
ハロ
Birth:
05.05
Blood:
B
-
Gu:
夢人
Birth:
05.05
Blood:
AB
-
Ba:
明弥
Birth:
02.03
Blood:
A
-
Dr:
正人
Birth:
12.03
Blood:
B