INTERVIEW
umbrella「管」

バンドの原点と打ち込みのサウンドをumbrella流に昇華したチャレンジのナンバーもパッケージされている作品について制作裏話も含めて話を聞いた。
取材・文:山本弘子
――初めて取材させていただくので、umbrellaの4人が共通して影響を受けた音楽を教えていただけますか? 唯:僕と春の共通点は歌謡曲とかJ-POPなのかな。 春:古い曲とか女性ボーカルの好みは似てますね。 唯:その一方でKORNとかヘヴィなロックも聴いてたり。 ――女性ボーカルというと例えばどんな方ですか? 春:僕は森田童子さんとか聴いてましたね。
唯:僕の場合は親が歌謡曲や演歌が好きだったので、美空ひばりさんとかよく聴いてますね。僕自身、アコースティックでカバーしたりするんですけど、太田裕美さんの「木綿のハンカチーフ」や中島みゆきさんの「糸」とか。あとはaikoさん、椎名林檎さん、Coccoさんやったり。
春:aikoいいよな(笑)。
唯:みんな共通点はちょっとずつあるよね。柊くんは日本のギターロックに詳しかったりするし。
柊:元々はハードロック、ヘヴィメタルが大好きだったので洋楽も聴くし、音楽は何でも聴きますね。
唯:将くんはアーティストというよりもドラム単体の音源を聴いたりとか。
将:世界で一流のドラマーが作っているドラムメインの音源をよく聴きます。
――どんなドラマーですか?
将:ベニー・グレブっていうジャズ、フュージョン系のドラマーが大好きです。唯さんとの共通点は東京事変。
唯:そうだね。あとHATE HONEYとか。
春:俺はsads。
唯:お互いに「これ聴いてみて」って言い合う仲なので。車の中が情報源になってますね。
――移動中に聴いたりとか。
唯:そうですね。お互いの携帯に入ってる音楽聴いて、知らない曲があったら、「これ誰?」とか。ええものは全部吸収する感じですね。
――そういう関係性が7年変わらず続いている?
唯:結成7年ですけど、このメンバーになって5年ぐらいなので。
春:各々が自由にやってきてますからね。
唯:そう。やりたくないことをやる気は全然ないし、自由にやってるからいいんじゃないかなって。最近、バンドがすぐ解散しますけど、「なんですぐにやめるの?」って思いますもん。
春:リリースのペースが早いから解散も早いのかな。僕らみたいに長年やってると解散したらファンのコがかわいそうやなって。7年もやってると解散しないと思ってるでしょうし、長ければ長いほど悲しませるんじゃないかなって。
唯:それもあるし、これだけ続いているとやめる理由がわからないですからね。生活の一環として音楽をやってるから。
――umbrellaは気がついたら先輩になっていた感じですか?
唯:先輩と思ってないしな。僕はヴィジュアルの世界に入って10年以上なんですけど、気づいたら同期がどんどんいなくなって。
春:気づいたら関西のいちばん長いバンドになっていましたね(笑)。
『「管」は初期のumbrellaの音楽にとても近い曲』(唯)
――ニューシングル「管」はタイトルを聞いた時にどういう意味のことを歌ってるんだろうと思いました。弦を使ったクラシカルなイントロダクションから始まり、バンドサウンドに移行していく展開で、切ないメロディが印象的です。
唯:「管」は前のシングル「Frontier」をリリースした後に作った曲なんです。「Frontier」は“新天地に行こう”という意識で作ったんですけど、影響を受けたアーティストも全部ひっくるめて自分の原点をもう1回見つめ直していたら、すぐできたのがこの曲です。人間って不思議やなあとか、生命とか愛もふくめてもう1回考えてみようって。最初はもっと勢いのある曲を出そうと思っていたんですけど、「管」が出来た時に春に「この曲で行かせてくれ」って直談判しました。すんなりOKしてくれてありがたかったですね。
――ということは初期のumbrellaに近い曲調なんですか?
唯:本当に初期の自分たちの音楽みたいな感じですね。初期衝動で曲を生んだ時のように作ったんですけど、それが今の成長したumbrellaとマッチしたなと思ってます。“新天地に行こう”というのは新しいものに挑戦するというより、自分たち独自のものを貫いて行くっていうことだとも思ったので、ブレることがないものを再提示して“これがumbrellaの音楽だよ”っていうものを出したいなという気持ちがありましたね。
――みなさんは「管」を聴いた時、どんな印象を持ちましたか?
春:無理せず、背伸びせず、自分がよく知っている唯くんらしい雰囲気のある曲やなって。ストリングスのイントロで始まって、ドラム、ギター、ベースが入って徐々に音が重なっていく感動がある曲ですね。今のシーンのトレンドがどうとかじゃなく、表題曲として出したいなと思いました。
柊:心地いいテンポ感、気持ちいいメロディの曲でストリングスも効果的で、いい曲だなと思いました。昔の曲にはストリングスは入っていないですけど、メロディラインは初期に近いし、こういうゆったりしたテンポの曲は最近、なかったので懐かしいなって。いろいろな音が入っているので、1曲の中にピークの箇所がいろいろある印象ですね。大サビはもちろんですけれど、イントロも際立っているし。
将:僕は最初聴いた時に「何ていい曲なんや」って。こういう曲をできるバンドにいられることが幸せだなって。
唯:こそばゆい(笑)。
将:デモ聴いた時に「ええ曲やな」ってフツーに口に出して言ってましたもん。世に出した時にどんな反応が来るか楽しみですね。
――各パートのこだわりもぜひ教えてください。
春:ベースに関してはアナログな機材をかまして音に柔らかさを出してますね。曲に馴染んで他の楽器と混ざるような存在感のある音を目指しました。
柊:ギターは曲を壊さないシンプルなフレーズを弾いているんですけど、音に関してはデジタル機材を使っていろいろなアンプをシュミレートして録っています。これまではスピーカーを4発使って録ってたんですけど、温かみのある曲なので今回は2発に減らして生感を出していますね。
――唯さんとギタリスト同士、話し合いながら録っていくんですか?
唯:基本、マンツーマンでレコーディングしてるんですよ。柊くんがギターを録っている中、いいフレーズだなと思ったら、「もう1回弾いてくれ」とかピックアップして構築していく感じです。ギターソロも僕がデモで弾いていたソロと柊くんのソロを左右のスピーカーで分けて一緒に出してるんですけど、うまいこと繋いでいけたら、「管」という意味あいともリンクしていいかなって。さっき話していたイントロで楽器が徐々に加わっていくのも、管が繋がっていくというイメージなんです。
将:ドラムに関してはシンバルもスネアもピッチを下げています。そうすることによって歌が前に出てくるので、うまいことハマったなと。
唯:将くんのドラムには今まで「もう少し手数を増やして」って言ってたんですけど、「管」は逆だったんですよ。
将:そう。「増やして」って言われるのかなと思って、手数を多くしたら「減らして」って言われて、そっちななんやって(笑)。
唯:そうなんですよ。この曲はシンプルに。後半に進むにつれて優しくドラマティックになる曲なので、丸みを帯びた音像にしたかったんですね。
『人の繋がりの管、新たな生命が生まれる時の血管の管でもあり』(唯)
――umbrellaのコンセプト「心に傘を」にピッタリの曲ですよね。
唯:そうですね。コンセプトにいちばんしっくりくる曲じゃないかな。“管”は人との繋がりの管でもあるし、新しい生命が生まれた時の血管の管でもあるし、人が亡くなる時の点滴の管でもあるし、いろいろ表現できるなと思ってタイトルはすぐに決まりました。
――“管”は今作のキーワードでもあるんですか?
唯:そうですね。2曲目の「アンドロイドと果実」にも通じる言葉で。
――“キミと今管を繋いで”という歌詞が出てきますものね。
唯:そうなんですよ。
――曲調は最初聴いた時はテクノかと思いました(笑)。
将:僕も最初、聴いた時には「何や、これ?」って。
唯:僕、打ち込みの曲とかリミックスってあまり好きじゃないんですけど、あえて苦手なものを作ってみたらどうなるのかな? って。この曲、春が気に入ってたんだっけ?
春:そう。今までになく打ち込みがガツガツに入っていて最初はオケだけだったので全くメロディが読めなかったんですけど、そういう時にはすごい曲作る傾向があるんですよ(笑)。実際、メロディが入ったら化けて、かなり気に入っている曲です。
将:僕もです。
柊:ライヴでどうなるのか読めないですけどね。
――生音と打ち込みを融合させているから?
唯:こっちは将くんに「打ち込み多いから手数減らしていいかな」って言われたんだけど「違う」って(笑)。打ち込みであろうがなかろうが、この曲はバンドサウンドありきなのでギターも歪ませて目立つようにしたかったし、デジタルと生音の戦いのようなイメージだったんです。“ドゥデドゥデ”っていうベースラインもあまり好きじゃないんだけど、「入れて」って。苦手なものを取り入れたらキレイにハマりましたね。
春:ベースは機械的なところと人間的なところと両極に振り切った感じですね。オカズは人間のニュアンス。
唯:ギターもすごいんですよ。
柊:リフレインが多いんですけど、ちょっとずつ味を出しながら。
唯:僕は間奏のノイズギターが好きなんです。悲鳴に近い音を入れてもらって。
柊:「管」とは逆にデジタルな音でエフェクターを多用していますね。
唯:ベースの生々しさと合わさって渦になってる感じが好きですね。いちばんビックリしたのはドラムなんですけど。
将:ドラムは今までやったことがないことをしているんです。デジタル感を出すために細かいフレーズをいくつか録って、たくさん貼りつけて、さらにその上から別の音を足していったんですよ。サビだけは人間味があるほうがいいと思って普通に叩いてるんですけど。
唯:今回、スネアの音が3種類あるんですよ。
将:スネアのヘッドにシンバルの縁みたいなものを乗っけてスネアと同時に鳴らしてみたらアナログなんだけどデジタル寄りの音になったんです。
唯:機械的な金属音が出るんですよ。そこにローピッチのスネアの音を重ねて、さらにハイピッチのスネアを足したりとか。
――めちゃめちゃ凝っているんですね。
唯:今回すごいですよ。ドラムの機材も増えたし。
――チャレンジの曲ですね。
唯:そうですね。「管」が原点なら「アンドロイドと果実」は最新。歌詞も機械、ロボットが人間に憧れている内容なのでデジタルと人間の出す音を混ぜたかったんです。この曲にはどこを向いても同じ顔だから、1つの個体になろうと思ったのに真似されてまた似たような顔が増えて「なんで一緒のことばっかりしてんねん」っていう「Frontier」に通じるメッセージがある曲ですね。
――アンドロイドが退化してアダムとイブまで遡っていくというか。
唯:そう。果実にはそういう意味があります。退化していかないと人間にはなれないので。
『音は爽やかだけどumbrellaらしい湿り気がある曲』(柊)
――なるほど。2曲を続けて聴くと3曲目の「箱庭」は非常にストレートなギターサウンドに響いてきます。
唯:これ、10年ぐらい前に作った曲なんです。
――ということはumbrella以前?
唯:前にやっていたバンドの曲なんですけど、その時は未完成で音源にもならなかったんです。「Frontier」に収録されていた「スロウレイン」という曲も9年前の曲なんですけど、僕自身がやってきたことはバンドが違っても同じなので引き継ぎたいって言ったら「やってみようぜ」って言ってくれて、10年かけてやっと形にできました。
――構想10年でCD化されたという。
唯:10年たって、どシンプルに行こうって。ドラムの音数も減ったもんな。
将:そうやな。
唯:勢いも増しました。
柊:音は爽やかな感じですけど、umbrellaらしい湿っぽさがどこかにある。
唯:決して明るくはないですからね。昔、自分が居た場所がまだ情景として残っていて、そこを目指したいけど……っていうわだかまりやモヤモヤした感じを出したくて、すごく寂しい曲なんですよね。
――それで「箱庭」というタイトルなんですか?
唯:「箱庭」は僕にとってはライヴだったり、自分の居場所を指すんですけど、これは夢が1回壊れたことがあって、その時のことを歌った曲ですね。その曲を今のメンバーが受け入れてくれたのがありがたかったし、昔、ひきずっていたことをみんながひっぱってくれた感じがしましたね。
『ワンマンの無料配布音源はumbrella史上最も明るい曲です』(唯)
――では、最後に11月12日に高田馬場AREAで開催されるワンマンライヴについてメッセージをお願いします。当日は来場者に無料配布音源「Loop」が配られるので、そのことについても予告してください。
春:僕ら大阪でずっと活動しているんですけど、この数年、高田馬場AREAでワンマンをやっておかないと同じ土俵に立てないと感じていたし、いつかやろうと思っていたので、ためらいはなかったです。メンバーもファンも信じているし、きっと良い景色が見れると思ってます。
唯:高田馬場AREAには個人的にも思い入れがあるんです。僕が10数年前、初めて東京に遠征してライヴした会場で、その時は失敗するし、ギターの弦切れるし、さんざんでギター折って捨てて帰った思い出があって(笑)。そこでやっとワンマンができると思うと感慨深いものがありますね。無料配布音源の「Loop」は6月11日の傘の日に感謝祭ということでライヴした時に即興で作った曲を作り直したものです。umbrella史上、いちばん明るくてポジティブな曲。初めて全員で歌っている曲でもあります。
春:レコーディングブースで歌ったの初めてですよ。
唯:感謝を込めて作ったので全員の声を入れようと。柊くんは起きてすぐに歌ったもんな。
柊:寝起きで歌いました(笑)。
唯:繰り返す毎日を頑張って生きようぜという曲になったので、絆が深まる曲でもあり、ぜひ手に入れてほしいなと。
――umbrella最初で最後の超ポジティブな曲ですか?(笑)。
唯:だと思います。これ以上、明るい曲作ったら俺、死んじゃうんじゃないかと(笑)。それぐらいレアな曲ですね。
柊:ワンマンはバンドをやる上でいちばん楽しみにしているんですけど、今回のシングルを引っさげてのライヴでもあるので、「管」のようなパワーバラードの世界観がライヴハウスでどう映えるのかワクワクするし、東京でワンマンできるということは、それだけ応援してくれる人が増えたということなので、感謝しつつ、いいライヴにできたらと思います。
将:歴史のあるライヴハウスでワンマンができるということ自体、単純に嬉しいですね。スケジュールを空けてチケットを買って見に来てくれた人が「来て良かった!」「楽しかった!」って言ってくれるようなライヴをしたいです。そうやって楽しんでもらうこと=僕の人生なので。
唯:終わった時に「良かったぁ」っていう余韻が残ったらいいね。
RELEASE
2017年10月18日 Release!!
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DCCNM-008 / ¥1,620(税込) [CD] 01. 管 02. アンドロイドと果実 03. 箱庭 |
LIVE INFORMATION
[Connect with xxx -Case.01 OSAKA-]
2017年10月21日(土) 北堀江club vijon
[Connect with xxx -Case.02 NAGOYA]
2017年10月23日(月) 今池3star
[Connect with xxx -Case.03 YOKOHAMA-]
2017年10月29日(日) Music Lab.濱書房
[Connect with xxx -Case.04 TOKYO-]
2017年10月30日(月) SHIBUYA DESEO
2017年11月12日(日) 高田馬場AREA
2017年11月04日(土) 心斎橋VARON
2017年11月06日(月) 池袋EDGE
2017年12月07日(木) 池袋手刀
2017年12月31日(日) 渋谷DESEO
2018年01月06日(土) 神戸VARIT. / 神戸チキンジョージ
2018年01月07日(日) 大阪RUIDO
2018年01月08日(月) 名古屋E.L.L
2018年01月14日(日) 高田馬場AREA
2018年01月17日(水) 福岡DRUM Be-1
2018年01月18日(木) 福岡DRUM Be-1
2018年01月20日(土) 阿倍野ROCKTOWN
2018年01月21日(日) 京都MOJO
umbrella PROFILE
※画像クリックで大きい画像が表示されます。-
Vocal:
唯 -Yui-
Birth:
02.19
Blood:
B
-
Guitar:
柊 -Shu-
Birth:
07.26
Blood:
B
-
Bass:
春 -Hal-
Birth:
04.30
Blood:
B
-
Drums:
将 -Sho-
Birth:
02.23
Blood:
O