FEATURE

怪人二十面奏「怪人二十面奏」

2017.06.20
漂うノスタルジーと、つきまとう暗く重い陰たち。怪人二十面奏というアーティストが音楽というかたちにより繰り出してみせるのは、それらを背景としためくるめくフィクションの世界だと言えよう。
長年の盟友同士であるマコトとKENが起ち上げた怪人二十面奏は、いよいよこの夏で2周年を迎えるという。来たる6月21日(土)には自らの名を冠したファーストアルバム『怪人二十面奏』を発表し、来たる7月8日(土)には東京キネマ倶楽部にて、アルバム発売&2周年記念単独記念公演となる[命日]を行うことが決定しているそうだ。
時に物憂げに、時に時に激しく、時に甘美に。数多の表情を駆使しながら、怪人二十面奏がみせつけていく濃厚さと芳醇さをたたえたこの音世界は、きっとあなたを耽溺させてくれるに違いない。

取材・文:杉江由紀
『だって、このバンド名とアルバムタイトルを見聞きした時には、なんとなく誰もがイメージする世界観ってあるはずじゃないですか』(マコト)
――ViSULOGでは初めてのインタヴューとなりますので、まずはあらためて「怪人二十面奏とは何ぞや」というところから、うかがわせてください。 マコト:もともとは、僕とKENでやっていたバンドがあったわけなんですけど、そのドレミ團が解散したのが5年前の2012年だったんですよ。
――もうそんなになりますか。 マコト:気付けばね(笑)。そして、そこから次もまた何かしらの音楽活動をしたいなと思った時に、当初は僕ひとりで弾き語りのライヴをしていたんです。あれは、1年くらいの間だったかな。ただ、それとは別にバンドもまたやりたいなという思いがあったので、2013年の5月からはTHE BEETHOVENも並行して始めるかたちになりまして、そこでソロに対して「ひとりでやるライヴってなかなか難しいな」と感じたところが出て来たりしたんですよ。つまり、弾き語りの方もソロではないかたちでやっていくのもアリだな、という風に思うようになったんです。

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――そこでマコトさんは、盟友であるKENさんを誘われたわけですね。 マコト:まぁ、連絡はずっと取り合っていたというのもあって、なんか自然と「じゃあ、一緒にやりますか」となったといいますか(笑)。まずはちょっと、弾き語りユニットみたいなかたちで始めて、僕がギター&ヴォーカル、KENがギターという構成でやってみようよ、ということになりました。
――KENさんからすると、再びマコトさんと活動を共にすることになった際、どのような心境でいらしたのですか。 KEN:ドレミ團が終わった段階で、僕も新しいバンドをやろうかなとか、人に誘われたりということもあったんですけど、何故かどこか本気になれないところがあって、乗り気になれない自分がいることに気付いたんですよね。そして、まさにそんな時にマコトからこの話を聞いて「それはやってみたいな」と純粋に感じたんです。
――きっとKENさんは、マコトさんの歌と共に音を奏でることに対して、特別な思い入れがあるのでしょうね。 KEN:確かに、それはあると思います。前のバンドで一緒に積み重ねてきた歴史というものもありますし、マコトというヴォーカリストの特性を考えると、この怪人二十面奏では「こんなことが出来るんじゃないかな」というヴィジョンも描きやすかったんですよね。
――そんな怪人二十面奏としての始動は、2015年6月でしたから……ちょうど今から2年前のことになりますね。 マコト:えぇ、そうなります。実は、ひとりでやっていた頃から“怪人二十面奏”というこの名前自体は何時かバンド名として使いたいな、と思って個人的に温めていたものだったんですよ。だから、KENとユニットをやるとなった時には「よし、ここで使おう」となりました。そして、そこからふたりでやっていたのがどのくらいだったっけ? 1年くらいだったのかな?
KEN:大体そのくらいじゃない? そこまで、頻繁に活動するというかたちでもなかったし。ペース的には、季節ごとに1回みたいな感じだったんですよ(笑)。
マコト:でも、ライヴの内容としてはいろんなことをやっていたよね。歌謡曲のカバーとか、あとはドレミ團のセルフカバーなんかもやったりして。それで、そのうち自分たちのオリジナル曲もやるようになって、タイミング的にはそこで「やっぱり、弾き語りユニットじゃなくてバンド形態でやりたいね」となったんです。
――なるほど。現在の怪人二十面奏は、マコトさんのソロを起点に考えると、第三形態となっているのですね。 マコト:結果的に、僕はこうしてふたつのバンドを並行してやることになっちゃいましたね(笑)。とはいえ、名前からしてそうなんですけど、THE BEETHOVENと怪人二十面奏では全く方向性とか空気感が全く違うので、それぞれで別の顔を持てているこの感じは凄く面白いです。
――では、対するKENさんはこの怪人二十面奏での活動というものを、現状どのようにとらえていらっしゃいますか。 KEN:感覚的には、弾き語りユニットとしての活動の延長線上で怪人二十面奏がバンドになった、という感じではやっています。でも、最初はほんとにワンシーズンに1回ライヴをやるくらいの活動スタンスだったので、まさかこうしてガッツリとフルアルバムを出すことになるなんて、あの当時は全く予想していなかったです(笑)。
『怪人二十面奏の音楽は歌というものの存在感が凄く強いんです』(KEN)
――かくして、6月21日にはいよいよファーストアルバム『怪人二十面奏』が発表されるることになりました。バンド名を冠しているだけあって、今作には怪人二十面奏のオリジナリティというものがぎっしりと詰まっている印象です。 マコト:ある意味、怪人二十面奏の個性というものは、このバンド名そのものに集約されているところがあると僕は思っているんです。だって、このバンド名とアルバムタイトルを見聞きした時には、なんとなく誰もが共通してイメージする世界観ってあるはずじゃないですか。
――どこか陰があって、昭和的なレトロ感や、叙情的なワビサビに満ちた音世界。怪人二十面奏が体現しているのは、まさにそういうものなのでしょうね。 マコト:多分、この写真の雰囲気とかも含めて今回の作品はかなり“そのまんま”だと思いますね(笑)。怪人二十面奏としては、相当わかりやすくやっているので、“こういう感じ”が好きな人には間違いなく気に入ってもらえるはずですよ。
――21世紀に入って久しい今、この何ともいえない昭和ノスタルジーが漂う今作は、非常に興味深いものとして聴こえてきますよ。昭和を生きたことがある人はもちろんのこと、この平成の時代しか知らない人たちにも、ぜひ聴いて欲しいところです。 マコト:もっとも、作っている方の僕らも、昭和のことをそこまでよく知っているのか? と言ったら、別にそういうことでもないんですよ(苦笑)。このアルバムには「一銭五厘ノ命ノ価値ハ」という曲が入っていますけど、その中で描いているような戦争の時代なんていうのは実際には全く知らないし、むしろそれとは真逆の全然豊かな時代を過ごしてきているくらいですから。
――いかんせん、70年以上も前のことですものね。 マコト:でも、そういう時代のことも何となくなら知ってはいるし、昭和の歌謡曲とかもどこか自然と自分の中に刷り込まれているところがあるので、そういった要素をこの時代に生きる僕たちが自分たちなりに表現するとこうなりますよ、というのが怪人二十面奏の音楽なんです。
――なかば無条件なかたちで、日本人なら誰もが持っているであろうDNA的なものが、怪人二十面奏の音楽には自然と反映されているのかもしれません。 マコト:もはや、自分たち自身では昭和だノスタルジックだワビサビだというようなこともあんまり強くは意識していなくて(笑)、もともと好きなことを怪人二十面奏としてやると、普通に“こう”なっちゃうんですよ。
KEN:何より、雰囲気どうこう以前に怪人二十面奏の音楽は歌というものの存在感が凄く強いんです。そこは、このアルバムの中からも全体的に色濃く感じられるところだと思いますね。
マコト:基本の部分では偏っていてマニアックなことをやっている自覚もあるんですけど、歌やメロディを大事にしていきたいという気持ちは、実際かなりあるんですよ。そういう意味では、仮にこの見た目や世界観はちょっと受け付けにくいという人でも、聴いてもらえればメロディ自体はちゃんと伝わってくれるんじゃないかな、という自信があるくらいです。
――KENさんが今作『怪人二十面奏』を仕上げていく際、特にこだわったことがあれば教えてください。 KEN:具体的なことでいうと、今回のアルバムではメジャーキーの曲を作らない、ということがひとつの軸としてありましたね。あとは、出来るだけアレンジはシンプルにするというのも心がけてます。出来るだけ、間奏とかも取っ払いたかったんですよ。極端なことを言えば、イントロ〜歌があってそれで完結するくらいでも良いなと思っていたくらいですからね。とにかく、わかりやすくマコトくんの歌を伝える音というのを目指しました。それもあって、1曲ごとの時間はけっこう短めです。
マコト:アルバムには全13曲入れているんですけど、時間的にはトータルで45分くらいですからね。
――しかし、聴き応えということで言えば。とても45分間とは思えないほど、密度が濃いものとして聴こえてくるのが不思議です。 マコト:そう、そうなんですよ! 濃いんです。僕も全体を通して初めて聴いた時、自分でビックリしました(笑)。
KEN:あー、これはそうかもね(笑)。
――ちなみに、それぞれの曲によっても成り立ちは違うのかもしれませんが、怪人二十面奏における曲作りのプロセスとは、往々にしてどんなものなのでしょうか。 マコト:ふたりなので、作り出すと曲が出来るのは速いですよ。まずは、僕が「こんな感じの曲が欲しいな」という注文を口頭で出して、彼(KEN)から曲があがってきたら歌詞をのせて完成です。
――なるほど。口頭で伝えらるイメージをもとに曲を作るというのは、第三者からするとなかなか難しいことのように思えます。 マコト:そのあたりは、本当にこれだけ一緒に長くやっているからこそ通じ合える部分なんだろうな、と僕も思います(笑)。彼ほど、僕のアタマの中にあることを忠実にカタチにしてくれる作曲者というのは、他だとまずいないでしょうねぇ。そこは完全に、KENさんを信頼して託しているところなんですよ。
――マコトさんからのオーダーというのは、抽象的な言葉であることが多いのですか? マコト:もちろん、極めてそうですよ(苦笑)。
――抽象的な言葉から、マコトさんの意図を的確にくみ取って楽曲を生み出していく秘訣があれば、ぜひ教えてください。 KEN:なんでしょうね? 10年以上も一緒にいるわけだから、なんとなく彼の好きなポイントとか、ツボみたいなのものはわかっているので、それをなるべく曲に対して活かしているだけなんです。
マコト:でも、たまに逆パターンというのもあったりするんですよ。KENさんから曲をもらって、そこに歌詞をのせたらKENさんが思っていたものとは全く違うものになっていました、でもそれはそれで面白いね!ってなることが(笑)。
――今作『怪人二十面奏』にも、そのタイプの楽曲は収録されていますか? マコト:さっきも少し話に出た「一銭五厘ノ命ノ価値ハ」なんかは、もともと昔から原曲があったパターンだよね。
KEN:もとは怪人二十面奏のために作ったものというわけではなかったんですけど、このアルバムに入れることになって、怪人二十面奏の曲として作り直したんですよ。
マコト:原形より、これはだいぶ重い感じになりました。そして、僕自身がそもそも求めていたのもこのかたちだったんです。正直、この曲に関しては出す時期を見計らっていたところもありますね。
――それは、どのような点においてです? マコト:やっぱり扱っているテーマが重いので、場合によっては「まだタイミング的に早過ぎる」となる可能性もあるなと考えていたんです。僕としてはこういう方向性の曲を推していきたいところがあるものの、なかなかこのご時世を考えるとシングルというかたちでは、ちょっと難しいのかなと。だから、今回もMVは一応「消心叫奏シネマ」の方で撮っているんですよ。だけど、個人的には「一銭五厘ノ命ノ価値ハ」をリード曲にしたかったくらいなんです。ほんと、このアルバムに入れることでようやくこの曲を世に出せたことは凄く嬉しいですね。
――先の大戦をモチーフにしてはいるものの、ここで描かれているのは人間模様という名のドラマであり、あくまでもフィクションですしね。ひとつの楽曲として、高い完成度を誇っていると思いますよ。 マコト:そうなんです。別に全然ヤバいことは書いていないし、悪いこととかも書いていないんですけど、世の中にはどうしても右と左というものがあって、そこに対してそれぞれの意見を持っている人たちも実際に一定数はいますからね。僕らとしてはそういったこととはまた違う次元で、この曲には今後のライヴで活躍していって欲しいなと思っているんです(笑)。
――なお、従来からライヴでやってきた楽曲たちだけでなく、今作には書き下ろしの楽曲も幾つか入っているそうですね。 マコト:結局、怪人二十面奏としてはこれまでにシングルを2枚と、ライヴ会場限定の音源なんかも出しつつではありましたけど、アルバムを出すまでにまるまる2年かかっちゃったわけじゃないですか。それを考えると、今回のアルバムはファーストでありながら、ここまで2年かけてやってきたことを集約したベストアルバム的な側面も多々あるんですよね。アルバムの最後に「其の証」が入っているのはその最も良い例で、これはここまでの怪人二十面奏にとっての代表曲的なものにあたる曲なんです。
――アルバムのトリを飾るのにふさわしい、大事な楽曲だということですね。 マコト:ただ、今回はそういったこれまでの財産たちだけでなく、新曲も想定していた以上に意外と出来ちゃったんですよ(笑)。だから、「消心叫奏シネマ」と「無理ゲー論」、「哀しきトリックスター」、それから「命日」なんかもこのアルバムの為に作ったものになるんです。
KEN:これまでライヴだけでやっていた曲もあわせると、このアルバムで初音源化した曲は合計8曲になりますね。そして、これまでに音源化している4曲も全てこのアルバム用に録り直しをしてます。


RELEASE

1st FULL ALBUM「怪人二十面奏」」
2017年06月21日(水) Release!!
【怪人盤】
BDBX-0039A / ¥2,500(税抜) [CD]
01. れくゐゑむ
02. 消心叫奏シネマ
03. 儚夢
04. 無理ゲー論
05. 新宿
06. 哀しきトリックスター
07. 劣等感
08. 一銭五厘丿命丿価値ハ
09. 命日
10. 其の証(新録)


【二十盤】
BDBX-0039B / ¥3,900(税抜)
[CD]
01. れくゐゑむ
02. 消心叫奏シネマ
03. 愛憎悪(新録)
04. 儚夢
05. 無理ゲー論
06. 想望カルト(新録)
07. 新宿
08. アヴストラクト シニシズム(新録)
09. 哀しきトリックスター
10. 劣等感
11. 一銭五厘丿命丿価値ハ
12. 命日
13. 其の証(新録)
[DVD]
「消心叫奏シネマ」MV


【面奏盤】
※オンラインショップ&ライブ会場限定
BDBX-0039C / ¥5,800(税抜)
[CD]
01. れくゐゑむ
02. 消心叫奏シネマ
03. 愛憎悪(新録)
04. 儚夢
05. 無理ゲー論
06. 想望カルト(新録)
07. 新宿
08. アヴストラクト シニシズム(新録)
09. 哀しきトリックスター
10. 劣等感
11. 一銭五厘丿命丿価値ハ
12. 命日
13. 其の証(新録)
[DVD]
「2016.11.28新宿ReNYマコト生誕祭'16-各駅停車、めぐり逢い。-LIVE映像」収録

LIVE INFORMATION

アルバム発売記念&2周年記念単独公演『命日』

2017年07月08日(土) 東京キネマ倶楽部




2017年06月21日(水) 今池3STAR
2017年06月22日(木) 心斎橋VARON
2017年07月15日(土) 大阪Paradigm
2017年07月16日(日) HOLIDAY NEXT NAGOYA
2017年07月29日(土) TSUTAYA O-EAST
2017年08月05日(土) 札幌KRAPS HALL
2017年08月06日(日) 札幌KRAPS HALL
2017年08月08日(火) 仙台MACANA
2017年08月10日(木) 名古屋 今池3STAR
2017年08月15日(火) 心斎橋soma
2017年08月17日(木) 福岡DRUM SON
2017年08月18日(金) 福岡DRUM SON
2017年08月19日(土) 広島CLUB QUATTRO
2017年08月23日(水) 高松DIME
2017年08月24日(木) 岡山IMAGE
2017年08月25日(金) 神戸VARIT.
2017年08月26日(土) 心斎橋BIG CAT
2017年08月30日(水) 新宿BLAZE
2017年08月31日(木) 新宿BLAZE
2017年09月09日(土) 青山RiZM


怪人二十面奏PROFILE

怪人二十面奏
  • 唄、アコースティックギター:マコト
    Birth:11.28
    Blood:O

  • ギター:KEN
    Birth:04.21
    Blood:O



DISCOGRAPHY

アーティストタグ

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