FEATURE

Soanプロジェクトwith芥「慟哭を鼓動として道とする音」

2016.12.20
2015年にMoranとしての活動に終止符を打ったのち、2016年6月1日に手鞠(ex.amber gris)とChantyの芥という2人のヴォーカリストを迎え、Soanプロジェクトを始動させたSoan。
ドラマーであり、ピアニストであり、ソングライターである彼が、新たなプロジェクトに描いていたヴィジョンは“静と動”の世界を自身のフィルターを通して具現化することだった。
今回は“動”を担う【Soanプロジェクトwith芥】をクローズアップ。
ライヴで披露してきた楽曲を収録した1stミニアルバム『慟哭を鼓動として道とする音』にはShun(ex.DuwelJuwel)やIvy(ラッコ)がゲストミュージシャンとして参加し、激しさや躍動感という言葉では語りきれない深みと孤独感を秘めた世界を創りあげている。
Soanが芥というヴォーカリストに魅了された理由、コラボレートしてみての実感など、2人に膝をつきあわせてじっくり語ってもらった。

取材・文:山本弘子
「芥のパンチのあるヴォーカルにやられて速攻、連絡しました」(Soan)

――まずSoanプロジェクトで芥さんとコラボすることになったいきさつから教えてください。 Soan:芥と自分の共通の知り合いの九条くんと一緒に飲んだのがファーストコンタクトです。もちろんChantyとはそれ以前にも共演したことはあったし、Chantyの上手ギターのshia.が実はMoranのベースだったZillの弟だったり、さらに言うとMoranの後期ベースのIvyも以前、Chantyの下手ギターの千歳と一緒にバンドをやっていたんですよ。
――繋がりが深いんですね。 Soan:そうなんです。不思議な縁があって陰ながら応援していたんですが、芥と一緒にやろうと思ったのは2015年の12月に新宿BLAZEでChantyのワンマンを見たことがキッカケですね。BLAZEは2階席がない会場ということもあって初めてお客さんと同じ目線で後ろから彼らを見たんですけど、その時の衝撃波がすごくて芥のパンチのあるヴォーカルにやられて、速攻、連絡しました。自分の中では、2人のヴォーカリストを迎えて“静と動”というコンセプトでやっていきたいと思っていたので「こういうことをやりたいと思ってるんだけど、芥どう?」って。

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――SoanプロジェクトはSoanさんの誕生日でもある6月1日に高田馬場AREAでのライヴで始動しましたが、誘った時にはすでに初ライヴの日程は決まっていたんですよね? Soan:そうですね。で、芥の声の艶が好きだということと、ヴォーカリストとして“動”の部分を担ってほしいということを伝えて。
:僕は誘われてまず思ったのは「面白そうだな」って。Soanさんが話してくれたshia.や千歳との繋がりもあったし、ウチのベースの野中もZillさんのことが大好きなんですよ。僕だけがFatimaやMoranのことをよく知らなかったので、怖いもの見たさじゃないけど、先入観がないから単純に興味が沸いたというのもあったのかもしれない。自分がChantyで描いているものとは違うものを求められるんだろうなと思いつつ。
「ヴォーカリストとして新しい道が開けるんじゃないかって」(芥)
――Chantyの芥とは違う側面を求められるだろうなと? :そうですね。声をかけていただいた時点で何となく想像以上のことを要求されるんだろうなって。面白そうだから、飛び込んでみたかったんです。ヴォーカリストとしても新しい道が開けるんじゃないかと思ったところは大きいですね。
――Chantyのメンバーに相談して決めたんですか? :はい。相談はしましたが、自分の中ではやることはほぼ決めていました。参加することによってChantyの活動が変わるわけではないので、メンバーも家族を送り出すみたいに快く「行ってきな」って。2度目の上京みたいな感じでした(笑)。
――そもそも人間的な部分でのお互いの第一印象というのは? :この世界に飛びこんでから、深く関わるような「先輩!」って思える人がいなかったこともあって、初めて飲んだ時に「お兄さん感」を感じました。僕、長男なので、それが何か嬉しかったんです。今回のプロジェクトの話がなくても、いろいろ相談したいと思える人だったので。
Soan:(笑)音楽を通じて沢山経験してきて良かったですね。でも、そうやって頼ってもらえるのは素直に嬉しいです。芥は単純に頭がいいなと思いましたね。自分が話すこともすぐに噛み砕いてくれるというか、ものごとを多角的に見られて対応力が高い。謙虚だしね。
――なるほど。そういう信頼関係があった上で始まったわけですね。一緒にやることが決まって、まずは初ライヴに向けての曲作りがスタート? Soan:そうですね。芥が決まって、DuelJewelのShunがギターをIvyがベースを弾いてくれることになって、コンセプトが明確になっていきました。サウンドはMoranより重めで、“声”を大事にしたいなと。Shunもシャウトだったり声も武器にしてきたギタリストだし、自分もドラムを叩きながら歌ったり叫んだりするスタイルだったので、芥の声にさらに違う角度からメンバーのシャウトやウィスパー、コーラスが重なることによってサウンドのみならず声による“動”も表現できたら面白いんじゃないかと。そういうヴィジョンがあって曲を作っていきましたね。
――ヴォーカリスト、芥さんのどんな面を引き出したいと思ったんですか? Soan:手鞠くんにしてもそうなんですけど、声に艶があるところが好きなんですね。芥はファルセットが魅力的で低い音からいっきにオクターブ上の高い音に移行する時の声色が好きなので、かなりキーが高い曲が多いですね。普通の人には歌えないぐらい振り幅があるんじゃないかと思ってるんですけど。
:(笑)そうですね。
Soan:芥なら大丈夫でしょうと。
――ミニアルバム『慟哭を鼓動として道とする音』に収録されている5曲もChanty以上に音域が広い曲が多いんですか? Soan:以上かどうかはわからないですけど、単純に創り手が違うのでメロディーも違うだろうし、芥は「新しいな」と思ったんじゃないかな。
:最初はそんなに僕のことを知らないだろうと思ってたので、範疇内に収めてくれると思ってたんですよ。でも、曲を聴いたら高い音と低い音のギリギリのところまで狙って作っているというか、でも歌ってみると何とか届くんですよ。「よくご存知だな」って(笑)。「メロディーはいじっていいよ」って言ってくださったんですけど、自分がふだん描かない波の上に乗っているのがわかったので、言葉尻とか細かいところ以外はSoanさんが作り出した波の上で泳ごうと思いました。サーフィンみたいなものですよ(笑)。
――このメロディーを乗りこなせるかなって? :そうですね。ちょっとキーが辛いぐらいの曲のほうが自分の幅の中で歌うより、むき出しになるものがあると思うんですよ。
――それはあるかもしれないですね。じゃあ、芥さんはSoanプロジェクトにまな板の鯉状態で臨んだんですか? :基本、最初はまな板の鯉になるつもりで臨んだんですけど、Soanさんが調理人だとしたら出来上がった活き造りの形はもしかしたら「こういうふうに盛り付けたほうが良かった」っていうものがあったかもしれないし、私という鯉が隠し持っている骨みたいなものがあって(笑)、「だったら、こうさばいてみよう」と思ったかもしれないし、どんどんお互いのやりとりが面白くなってきていますね。
「“動”とは言え闇の中に一筋の光が差し込んでいる感じ」(Soan)
――聴かせていただいた印象は“動”でありながら、シリアスで“闇”の部分が強く感じられたんですよね。 Soan:そう言っていただけるのはすごく嬉しいですね。シリアスさ、もの哀しさ、退廃的な感じがこの作品から伝われば――。自分自身が好きなヴィジュアル系の像が投影されていると思います。自分にとってはキャッチーでポップというより、儚くて繊細で切ないものがヴィジュアル系の真髄というか、日本独特の良さが反映された音楽だと思っているので、“動”と言ってもどちらかというと“闇”の部分が強いですね。
――開放感がある激しさというより密室のイメージですもんね。 Soan:芥も手鞠も自分も光と影という対を成すものを表現していると思うんですけど、バランスとしては闇の中に一筋の光が差し込んでいるぐらいのほうが心地いいんですよ。そういうふうに表わすことによって光が聴き手にとって救いになったりもするだろうし。芥もネガティブな面とポジティブな面を持っているヴォーカリストなので。
「歌詞を書いていると荒野の中を独りで歩いている気分になる」(芥)
:闇人間です(笑)。Chantyでもそういう面は出しているんですけど、Soanプロジェクトの曲は書いていると、より孤独になっていく気がするんですよ。Chantyではふだん生きている中で感じることを書くことが多いんですけど、Soanプロジェクトの歌詞に向かっていると茨が敷き詰められている荒野の中を独りで歩いているような気分になって、進むごとに自分の身が切られていくみたいな。
――へえ。そうだったんですね。 :対自分というか、自分の中にどんどん潜っていく感じですね。
――歌と演奏にいい意味での揺れが感じられます。 Soan:嬉しいですね。
:何か薄靄がかかっている感じですよね。光がボヤッとしている。
Soan:そういう感じかもしれない。
:楽曲然り、歌詞然り。その光に向かって手を伸ばしているのかどうか、それが自分に向かって射している光なのかもわからないところがあるなって。
Soan:芥がさっき言ってくれたように沈んでいく感じが伝わるといいですよね。例えば海の中に潜って見える光は霞んで見えると思うので、そういう情景のイメージは近いかもしれないですね。
「『透過幕』という曲はミニアルバムの中の最深部」(Soan)
――ではミニアルバムの中で各自、特に印象深い楽曲のエピソードというと? Soan:「透過幕」という曲は6月1日の初ライヴに向けて書いたんですけど、Soanプロジェクトwith芥のコアになる曲になったらいいなと思ったんですよ。5曲の中で唯一のバラードであり、いちばん最深部というか。
:俺も「透過幕」にしようと思ってた。
Soan:ホントに? “この曲からこんなタイトルが出てくるんだ?”って驚いた曲でもあるし、言葉選びがすごいですね。
:この曲の主人公が首輪をつけて縛っているものは人じゃないものに置き換えてもらってもいいんですけど、自分の理想を押し付けて思い通りにならないから壊していく様というか。自分が操っていると思っても、透過している幕を1枚はさんでいて、幕を超えられないで終わってしまうことって対人間に限らず、すごく多いような気がするんですよね。でも、その幕は綺麗なものしか見たくない自分が張っているものかもしれない。それに気づかずもどかしかったり、乱暴になってしまったり。
Soan:読んでるだけで怖い歌詞ですよね。
――倒錯した愛にも思えるけれど。 :そうとも捉えられるんですけどね。歌詞の最後“「いいよ」と囁いた声が離れない”というところから主人公が嬉々として首を絞めている絵は浮かばないと思うんですよ。犠牲の上に成り立つという意味ではなく、そこで自分の浅はかさを感じて何かに向かっていくことができればって。この曲は1つのテーマに絞って書いているように思えて、わりと自由な解釈ができる曲かもしれない。何と言っても最深部ですからね。
Soan:最後の歌詞で現在進行形の話かと思いきや、主人公が夢から醒めるじゃないけど、今のことを歌っているわけじゃないんだというところにより恐怖感をかきたてられましたね。すごい歌詞だなと思った。
「初めて聴いた曲『不確かな箱庭』にはSoanさんの覚悟を感じた」(芥)
――偶然、同じ曲だったのでもう1曲ピックアップすると? :「不確かな箱庭」はSoanさんが最初に僕に投げかけてくれた曲なんです。孤独の道を歩いていくイメージはここから始まったみたいな。
――そうなんですね。 :Soanさんから具体的に曲のストーリーを聞いたわけではないんですけど、聴いた時に“覚悟のようなものを感じたんです。このプロジェクトに対する覚悟だったり、勇者があらためて自分の剣を手にとって、もう1回何かに向かっていくイメージが頭の中に浮かんだんですね。なので、“祈るように叫ぶ声は誰にも届かないまま”というのはSoanさんにとってMoranという大きな歴史が終わって、ホントは描き出したいもの、吐き出したいものがあったんじゃないかなという想いで書きました。最後の“降り止まぬ音色ずっと掴み離さない僕がいる”という歌詞は最初は“鳴り止まぬ耳鳴り”だったものが音色に生まれ変わって、確固としたものになって、ここからまた物語が進んでいくというイメージです。この曲が生まれて歩く道ができたような気がしましたね。
――Soanさんの音楽人生と重ね合わせて書いたんですね。 Soan:芥が言ったようにいちばん最初に書いた曲なので、こういうアプローチをしてくれたのはすごく嬉しかったですね。
:悩んだんですよ。自分のことじゃないから、Soanさんのことをこういうふうに書いていいのかなって。
Soan:でも、この曲は俺だけじゃなく、聴く人にも当てはまる可能性が高いんじゃないかな。自分の人生を投影できるというか。
:そうですね。Soanプロジェクトを応援してくれる人たちを含めて、傷を抱えながら進んでいく様、みたいな曲ですね。
――重みのあるドラマティックなサウンドと合っていますよね。 Soan:そうですね。ライヴでも1曲目に演奏することが多いんですけど、冒頭のAメロからファルセットとオクターブ下の低い声を重ねて歌ってもらって、そこにさらにShunのシャウトが入ってくる。“動”の武器の1つである声を意識した曲なので思い入れが強い曲ですね。
――収録されている曲は全曲ライヴでは披露しているんですよね。 Soan:そうですね。
――ということは2月の東名阪ワンマンツアーはこのミニアルバム以外に新曲も加わる感じになるんでしょうか? Soan:もちろん新曲も演奏すると思います。内容に関しては名阪は初お披露目になりますが、見せ方だったりライヴに対する考え方はワンマンだろうが、イベントだろうが、全然変わらないので、特にリリースに特化したツアーではないですね。芥に関しては声を武器により深く曲を吸収してもらって、歌詞をより自分のものにして表現してもらえたらなと――。芥の言っていた荒野の世界や枝さえも生えていない雪原の世界もありつつ、どこかあったかい部分も表現できたらいいなと思ってますね。
:活動当初からSoanさんが言っている“超攻撃型”という意味がわかるライヴだと思います。ワンマンということで、長い時間を一緒に過ごすことで、より伝わるものがあると思うので、ぜひ見に来ていただけたら。
Soan:超攻撃的と言っても、ただ激しいだけじゃないっていうのが伝わったら嬉しいですね。




COMMENT MOVIE

RELEASE

1st Mini Album「慟哭を鼓動として道とする音」
2017年01月18日 Release!!
CD
S.D.R-306 / ¥2,700(税込)
[CD]
01. 不確かな箱庭
02. 隔つ虚構紡ぐ真実と憧憬
03. 透過幕
04. arrive
05. hysteria show time


LIVE INFORMATION

『慟哭を鼓動として道とする音~東京編~』

2017年02月03日(金) 高田馬場AREA

『慟哭を鼓動として道とする音~名古屋編~』

2017年02月11日(土) 名古屋SPADE BOX

『慟哭を鼓動として道とする音~大阪編~』

2017年02月12日(日) OSAKA MUSE


Soanプロジェクトwith芥 PROFILE

Soanプロジェクトwith芥

  • Vocal:

    Birth:
    04.29
    Blood:
    A

  • Piano&Drums :
    Soan
    Birth:
    06.01
    Blood:
    B



DISCOGRAPHY

アーティストタグ

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