INTERVIEW
ベル 「ルフラン」

取材・文:山本貴也
――2周年を迎えましたが、ここまではどんな2年間でした?
明弥:とても良い状態で2周年を迎えられたと思いますね。バンドとしてもやりたい音楽をしっかり表現できて、コンスタントにツアーもリリースもできて、お客さんもどんどん増えてきて、自分たちの中でも2年間やってきた自信が音にもライヴにも出てきてるかなと。
――もう2年?まだ2年?
明弥:早かったなと思うこともあるんですけど、バンドの状態を見てるとまだ2年かとも思うし、どっちもありますね。
ハロ:この2年間はずっとメンバーと一緒にいたので、同じ2年でも特に濃い2年を過ごせたと思いますね。
正人:まだ2年かって感じなんですけど、本当に濃い2年だったので1日が過ぎるのがすごく早かったですね。お客さんともメンバーとも良い関係でいられたので、3年目もこの先もずっと良い関係でいられるなという自信があります。
夢人:あっという間に過ぎていって、3年目、4年目もそれこそまた同じこと言ってるんじゃないかなって思うんですけど、長く続けていけるバンドを目指したいってすごく思っているのでまだまだこれからだなという感じです。
――10月18日に行われた「結成2周年記念公演」はどうでした?
ハロ:1周年も2周年も同じReNYだったので、自分の中で「どういう気持ちになるんだろう?」って思ったんですけど、やっぱり1年目とは違う感覚で、これだけ活動を続けることを望んでくれてる人がいて、自分たちの為に時間を割いてくれる人がいて、関わってくれる関係者の方も増えてきて、責任感というか感謝もそうだし、“バンドは続けていかなきゃ意味が無い”っていうことをより思うようになりました。それは1年目のReNYでは考えられなかったことだし、ライヴの内容はもちろん、自分たちでしっかり決めたことをやれたのは良かったんですけど、それ以上に心境的な部分で、3年目に向かっての覚悟を決められたライヴでしたね。
――今回リリースされる5枚目のシングル『ルフラン』は映像が2曲あります。これは両A面という扱いになるんですか?
ハロ:僕らの中で2周年を経てのシングルになるので、2周年記念じゃないですけど、今までシングル4枚、ミニアルバム1枚、フルアルバム1枚を出してきて、自分達の楽曲の広がりを表現していくにあたって、初の試みで両方に振り切ったMVを1本ずつ作りたかったんです。1作品に1枚という変な固定概念を取っ払って、どっちが表題曲とかA面とかそういうことではなく、自分達の表現したいことがそれだけあるなら両方撮ろうよって。自分たちがやりたい楽曲や方向性が『ルフラン』に収録されている4曲ですという感じですね。
――その4曲の中から表題曲を「ルフラン」にしたのはどうして?
ハロ:僕のわがままですね。デモの時から歌がのったらもっとカッコよくなるイメージがずっとあって、衣装の感じから楽曲、歌詞まで全部のピースが僕の中で綺麗にはまったんです。本当に悩んだというか「雨に謳えば」がダメな理由も1つもなくて、最終的に「じゃんけんで決める?」って言うくらい悩みました。
――制作にあたってのテーマやコンセプトはありました?
明弥:前作「真夏のバラッド」が明るい曲で衣装も今までとは違った感じだったんですけど、やっぱりビジュアルを伴っての楽曲にしたいなっていうのはありました。あとは個人的に同期を少なくしたいと思っていて、そしたら偶然なのか夢人が持ってきた曲もほとんど同期が入ってなかったんです。今までは同期ありきのライヴ作りをしてたんですけど、やっぱりバンドサウンドで勝負したいなって。
夢人:「ルフラン」に関してはシングルっぽい曲を書きたいなって思って出来た曲で、今までは歌謡のエッセンスだったりベル的に押さえたいポイントを入れて作ってきたんですけど、「真夏のバラッド」で踏ん切りがついたというか、どういう形であってもベルがやればベルなんだなって気づいたんですよね。だからわりと自由に作ったんですけど出来てみたらやっぱりベルになりました。最初の頃は、新しいことをしなきゃとか、今までと違う夢人を見せなきゃっていう意識がすごく強かったんですけど、どんどん自分というものを自由に出せるようになってきた結果が「ルフラン」なのかなって。
――よりストレートに夢人さんらしさが出せるようになったんですね。
夢人:そう思いますね。でも、Twitterのリプで「これはきっと明弥さんの曲ですね」って書いてる人いましたけど(笑)。
ハロ:それも結局ベルらしさが出てるからこそだよね。
夢人:そうそう。アッキーと僕って結構分身の術で分かんないっていう人が多いみたいで。
明弥:目指すところや見えてる方向性が一緒だからだろうね。
夢人:まあ良いことかもしれないね。
――「ルフラン」というのはどういう意味なんですか?
ハロ:“繰り返す”という意味のフランス語です。英語だとリフレインですね。これは歌詞の書き方をちょっと変えていて、先に時代背景や登場人物の設定を決めて、小説みたいなプロットを1本書いてからそのストーリーを歌詞にしていきました。ヴィジュアル系の良さって楽曲だけじゃなくて、見た目も含めて作品を表現できる部分だと思うので、衣装もそうですけど、大正時代のことをいっぱい調べて書いたので新しい挑戦をしました。
――この歌詞の原作があるってことですか?
ハロ:原作があります。すごく時間はかかったんですけど、自分の中でストーリーがしっかりしてる分、より感情移入して主人公の気持ちになって歌えましたね。
――どうしてそういう書き方を?
ハロ:2周年を経て、メンバーが作ってきてくれる曲もどんどん新しい挑戦をしてきてくれるようになって、自分自身も歌詞を書く時に手癖じゃないんですけど言葉を選ぶ癖みたいなのがあるんです。同じ書き方だと今までの曲で使った言葉とかがどうしても出てきちゃうので、それを真っさらにするために新しい書き方をしてみました。
――MVの色味がすごく綺麗ですね。
ハロ:プロジェクターとライティングで影を作ったり、信じられないくらいスモークを炊いたりして、ちょっとノスタルジックな雰囲気というか、外国からちょっと新しい文化が入ってきたようなハイカラな感じを出しました。
明弥:顔はあんまり見えないんですけど、雰囲気モノでこういう映像を撮ったことがなかったので、とにかくカッコいいですし、要所要所でスーパースローとかも入ったりして、それがまた疾走感を出してるのかなと思いますね。
ハロ:「真夏のバラッド」の時は、ひたすら忙しい感じでガンガン映像が入ってくる感じだったんですけど、今回は映像を見ながら楽曲の世界観にスーッと入っていけるような感じです。
「男目線になってるのも僕の中の承認欲求を加味しているから」
――「雨に謳えば」についても教えてください。
明弥:“歌謡サスペンス劇場”という言葉がベルにあるんですけど、サスペンスドラマに使われそうな曲を作りたいと思って書いてみました。ライヴ曲としても成り立つようにちょっとテンポも速めで派手だけど怪しさもあるロックなシャッフルという自分の理想通りになりました。
――すごく狂気を感じました。
ハロ:アッキーから「2時間ドラマのサスペンスみたいな歌詞を書いて」と要望があったので“歪んだ承認欲求”を書きたいなと思ったんです。いろいろ事件とかを調べると承認欲求が引き金になった事件がたくさんあって、それをモデルにしながら自分自身にもある承認欲求を文字にしていって、男目線になってるのも僕の中の承認欲求を加味しているからなんです。「雨に謳えば」というタイトルにしたのは、雨が降ってる時に雨粒の数って数えたことないと思うんですよね。インターネットもそれと同じで、インターネットの情報量がどれだけあるかなんて数えられないし数えたことないと思うんですよ。現代の溢れる情報の中では、どれだけ声を発しても歌っても届かないこともあるなと思って、今までベルで使ってきた“雨”という意味とは違う“雨”を使いました。より深く考察されたい方は、目線を変えて読んでいただくとまた違った楽しみ方が出来るんじゃないかな。
――これも原作があるんですか?
ハロ:原作を書いたのは「ルフラン」だけですね。原作はないですけどかなり調べました。“手錠”という単語を使ったのも、読み物として分からない部分が出てきてしまうので、あえて分かりやすい単語を入れて、あとは読み手の受け取り方によってかなり違うものになると思います。
――鼻歌のようなものが入っているのは?
ハロ:サビの最後に入ってるんですけど、それによってより狂気感が増すというか、事件が起きてる目の前で犯人が鼻歌を歌ってるという狂気的な部分を裏テーマとして描きたかったんです。
――MVは突っ込みどころが満載ですが……。
夢人:内容がよく分からないと思うので雰囲気を楽しんでもらえれば。そこに中身はないですね(笑)。
ハロ:単純に映像作品として楽しんでもらいたかったので振り切った作品にしてみました。音は音として楽しんでもらえれば。
明弥:インパクトはあると思うし、今年はファッションでもバブル的な雰囲気が流行ったりしたので、面白おかしく作ったというよりは、時代背景をふくめてベルがこういうことをやったら合いそうかなって。「ルフラン」があっての「雨に謳えば」のMVだし、それができるのもベルだしっていうところですね。
ハロ:ビンタされてた男の人は僕らの1作目、2作目とほぼ出てるくろちゃんっていう人なんですけど、コミカルな演技もシリアスな演技も出来るのですごく好きなんですよね。あと誰かが女装するっていう話も出たんですけど全員が頑なに拒否しまして……(笑)。
――冒頭が女性の脚から始まるじゃないですか。絶対にメンバーの誰かだろうなって思ったんだけど今回は違いましたね。
一同:(笑)。
ハロ:今までがそうだったからね。
夢人:雇っちゃいました(笑)。
ハロ:ヘアメイクさんにも相談して、当時のバブル感を出してもらいました。
夢人:本人達も笑ってましたよ。「眉太っ!」って(笑)。
ハロ:本当は肩から下げる携帯電話とかも使いたかったんですけどね。僕らがスーツを着てるのもショーパブで演奏してる感じを出したかったので衣装だとちょっと雰囲気が違うなって。最後に謎のシーンもありますしね。
――この曲調でよくここまで振り切りましたよね。
ハロ:映像はあくまでも入口になればいいなと思うので、これをきっかけに他の曲も聴いてもらいたい。
夢人:鼻で笑っていただければそれが正解です(笑)。
「在り続けるということが一番お客さんのためになるんだなってことをすごく考えるようになりました」
――「秋桜の咲く頃に」の頭の音はアコーディオンですか?
夢人:頭の中でその音が鳴ってて使いたかったんですけど、「この音なんだっけ?」ってアコーディオンの音に行き着くまでにすごく時間がかかりました。アッキーの曲で「ドラマ」っていう曲があって、その「ドラマ」で使ってる音なんだけどってアッキーに聞く本当に一歩寸前で思い出しました(笑)。アレンジはシンプルなんだけど調の移動は忙しいっていう面白い曲になってます。
――アコーディオンの音から出来た曲なんですね。
夢人:頭の中で構成も全部組み立てて作曲するっていう技を10代のアルバイトしてる時に身に着けて、レジ打ちしながらよく作曲してました(笑)。
――「秋桜」の読み方は“コスモス”じゃないんですね。
ハロ:“コスモス”って本当は読まないんですけど、あの曲が有名すぎて変換でも出てくるようになったみたいなんです。だから「コスモス」って読みにするかすごく悩んだんですけど、そう読んだ瞬間にどうしてもあの曲のイメージが付いて回ってしまうのでやめました。夢からデモが来たときに、ちょうど夏が終わって涼しくなりだしたくらいのときだったので、その肌寒くなった雰囲気と曲の雰囲気がすごく合うなっていうのと、秋の曲がなかったので秋の曲にしようと思ったんです。「秋桜」の花言葉が“乙女の純潔”なので、曲の中に出てくる女性は、自分の幼かった少女時代を思い出しながら話が進んでいくという歌詞にしました。
――「未来予報士」はこれだけ曲のテイストが変わりますね。
明弥:「ルフラン」「雨に謳えば」「秋桜の咲く頃に」がベルの中では王道なので、ちょっと新しいことをやりたいなと思って「未来予報士」を作りました。僕の曲の中でここまで明るい曲は始めてですね。実験的な曲ではあるんですけど、いざちゃんと音を重ねたらベルサウンドになったので、ライヴでも映えそうだし早くやりたいですね。
正人:ドラムに関しても自分がやったことのない曲調だったので一番難しかったです。タッチだったり、微妙な力加減を調整して叩いたのでライヴでやるのがちょっと怖いです(笑)。
明弥:ベルの楽曲って歌詞とか楽曲の中で画が見えたりする曲が多いんですけど、この曲に関しては心を無にして聴いてほしいですね。
ハロ:歌詞も難しかったですね。アッキーからは「なんとなく流れてくるような日常を書いてほしい」ってオーダーがあって、テンションが低くもなく高くもないみたいな平常心を意識しながら、2周年を経て色々思うこともあったので、付いてきてくれるファンのみんなに対して書きました。
――こういう曲ができるとますます楽曲の幅が広がりますね。
夢人:もう何も考えないで作ることにしました(笑)。
明弥:結局は自分達がやりたいことをやっていければそれが一番いいのかなって。そう思えるようになったのも、自分達の音と言葉に自信が持てるようになったからだと思うんですけどね、
――「冬の六大都市ワンマンツアー」はどんなツアーになりそうですか?
ハロ:6大都市を回りながら今回の音源だったり、3年目を駆け抜けていくにあたっての気持ちだったりを皆さんにしっかり届けられるツアーにしたいですね。
――最後にViSULOGを見ている人にメッセージをお願いします。
正人:札幌が増えて6大都市ツアーになったし、お客さんに感謝をしつつ、体調にも気をつけて3年目の僕らをしっかりと見せつけたいですね。
明弥:こうしてワンマンツアーができるのも待っててくれるお客さんのおかげだし、札幌を追加したのも夏のツアーですごく反応が良くて、「ワンマンやりたい」って思ったから決めたことなので、会いに来てくれたら絶対に良いライヴを作る自信もあるので会場に足を運んでほしいです。
夢人:2年やってきて、どんなに良い曲を作ってお客さんのために届けるっていうよりも、在り続けるということが一番お客さんのためになるんだなってことをすごく考えるようになりました。だから3年4年もあっという間だったなって言えるように、地に足の着いた活動の一環としてワンマンツアーに向かって行きたいですね。来年からの展開もまた面白いことが出来そうなので、ファンの皆さんと一緒に楽しんでいけたらなと思います。わ!これ「100点のコメントじゃない?
一同:(笑)。
ハロ:イベントツアー、ワンマンツアーって何本もライヴがあるけど、ライヴに来てくれるお客さんにとっては1本1本がすごく大事なライヴだと思うんですよね。2年経って思ったのが、なあなあになるようなことがあっちゃいけないし、自分自身も変わらなきゃいけないなって。2年、3年、5年先のことは分からないですけど、今一生懸命やっていくことがこの先々長くやれることに繋がっていくんじゃないかなって。僕らのためにも皆さんのためにもベルを続けていきたいので、今後ともよろしくお願いします。
RELEASE
2016.11.30 Release!!
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LIVE INFORMATION
2016年11月26日(土) HOLIDAY NEXT NAGOYA
2016年11月27日(日) 心斎橋VARON
2016年12月2日(金) 福岡Drum SON 正人生誕祭 筑豊魂2016
2016年12月10日(土) 札幌SUSUKINO 810
2016年12月11日(日) 札幌SUSUKINO 810
2016年12月18日(日) 仙台HOOK
2017年1月8日(日)TSUTAYA O-WEST
2017年2月3日(金) 浦和ナルシス
2017年2月11日(土)名古屋E.L.L
2017年2月12日(日)大阪RUIDO
2017年3月11日(日)高田馬場AREA
2016年12月17日(土)高田馬場AREA
2017年1月13日(金) 大阪RUIDO
2017年1月15日(日) 博多DRUM SON
2017年1月21日(土) 仙台MACANA
2017年1月28日(土) 名古屋ell.SIZE
2017年2月2日(木) 渋谷REX
ベル PROFILE
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Vocal:
ハロ
Birth:
05.05
Blood:
B
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Guitar:
夢人
Birth:
09.22
Blood:
AB
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Bass:
明弥
Birth:
02.03
Blood:
A
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Drums:
正人
Birth:
12.03
Blood:
B