ViSULOG 2020年9月号 COVER ARTIST / cali≠gari
名盤再び。
20年前に発表された名盤『ブルーフィルム』の素晴らしさは今も色褪せることなどないが、ここに来てのcali≠gariはヴォーカリスト・石井秀仁氏が加入して今年で20周年でもあることを記念し、『ブルーフィルム -Revival-』を完成するに至ったという。

“エロ”アルバムとしても名を馳せたオリジナル盤の持っていた個性はそのままに、より色濃くさらに鮮やかに彩られたエロティシズムあふれる世界は、きっとあなたをどこまでも魅了するに違いない。

なお、『ブルーフィルム -Revival-』のリリースに付随するツアーとして、10月から11月にかけては名阪での[プライベート♥エロチカ 2020]と東京でのファイナル[クライマックス♥エロチカ 2020 ]と3本のライヴが決定。

始動から四半世紀をゆうに超えても衰えるどころか、いっそうの漲りぶりをみせているcali≠gariの跋扈していく様を、その眼と耳に焼き付けるべし!

取材・文:杉江由紀
本当ならcali≠gariとしては新しいアルバムを出したかった(青) ーー時が経つのは速いものです。ふと気付けば、cali≠gariはヴォーカリスト・秀仁さんを迎えられてから今年で20年の節目を迎えたことになります。そして、このたびはいまだ名盤として評され続けているだけでなく、“エロ”アルバムの異名も持つあの『ブルーフィルム』が、20年の時を経たうえで『ブルーフィルム -Revival-』としてリメイクされることとなりました。ちなみに、結成25周年+再結成から10周年にあたった昨年にはEP『この雨に撃たれて』で名曲「冷たい雨」がリメイクされていましたし、EPの夕立盤についてはアルバム『10-Rebuild-』が特典としてつけられてもいましたから、きっとcali≠gariとしてはこのタイミングで『ブルーフィルム -Revival-』を出すこともある意味では必須だったのかもしれませんね。 桜井青:何故このアルバムを出すことになったかというのは、ほかのインタビューでも同じことを言ってるんですけど、そこはとても簡単な話なんですよ。むしろ、本当ならcali≠gariとしては新しいアルバムを出したかったんです。でも、今年はこんなコロナなご時世になってるじゃないですか。今アルバムを作ったとしても、普通に全国ツアーをやるというのは難しいですし、仮にやれたとしても観客動員数はかなり絞らなければならないわけで。そうなると、どうしても金銭的に利益を出すことは難しくなってしまうんです。 「そういうば今年は『ブルーフィルム』の20周年じゃん」という話が出て来て(青) ーー大変悩ましいところですね。そこは本当に由々しき問題だと思います。 桜井青:まぁ、中には汚い話だと思う方もいるでしょうけど、それでもやはり我々としてはおカネを稼ぐ為に音楽をやっているという面もありますのでね(苦笑)。せっかく新しいアルバムを作っても利益が出ないのでは困りますから、もともと自分も含めて研次郎くんも石井さんも新曲は作っていたんですが、5月から6月にかけて新作を出すのか・出さないのかという協議を続けていた中で、「そういうば今年は『ブルーフィルム』の20周年じゃん」という話が出て来て、だったら今回はそこに出来た新曲も入れて新録作品としてビクターさんから出すのはどうよ?っていうことになったんです。 ーーなるほど、そういったことでしたか。 桜井青:ゼロから新しいアルバムを作っていくのと比べれば、これまでの20年で何回もライヴでやってきた曲たちが多い『ブルーフィルム』の新録をメインに作るのは、そこまで労力もかかりませんからね。今ライヴでやっているアレンジ、今ライヴでやっているポテンシャルでそのままレコーディングをして、そこに新曲を加えてパッケージングするのが今のcali≠gariにとってベストな選択であろう、と判断したわけなんですよ。 cali≠gariって凄いなと自分自身でも思いました(笑) (青) 技術的に言えば今の方がやれることはたくさんありました(秀仁) ーーただ、『ブルーフィルム -Revival-』という新しいタイトルを冠したとはいえ、20年前に生まれた『ブルーフィルム』の楽曲たちと新曲たちを1枚の中に同居させて成立させる、というのはそれなりに難しいことだったのではないです? 桜井青:いやー、そこはcali≠gariって凄いなと自分自身でも思いました(笑) ーーたとえば、秀仁さんの場合『ブルーフィルム -Revival-』を制作されていくうえで主に意識されていたのはどんなことでしたか。 石井秀仁:わりと普通の答えになっちゃいますけど、ちゃんと真面目にやろうって思ってましたね。純粋にヴォーカリストとしてしっかり歌おうという気持ちが強かったので、サウンドうんぬんの前にヴォーカルで『ブルーフィルム』の世界を『ブルーフィルム -Revival-』としてアップデートさせたい、という姿勢で臨むようにしたんです。それに、オリジナルは20年も前の作品なんで、技術的に言えば今の方がやれることはたくさんありました。もちろん、だからっていろいろやりすぎると今度は原曲の持ち味を損なってしまいかねませんから。そこはバランス感も大事にしてます。 ーー研次郎さんからしてみると、今回『ブルーフィルム -Revival-』を制作されていくうえで重視されたのはどんなことでした? 村井研次郎:大事にしたのは、あまり懐かしまないということですかね。このくらいの歳になって、懐かし話や思い出話でヘンに盛り上がり過ぎちゃうのはそんなにカッコいいことじゃない気がするんですよ。だから、僕としてはニューアルバムとしてレコーディングするような意識でいました。 ーーそして、これは今作に限らずあらゆるアーティストのリレコーディング作品に共通する問題なのですが…誰がどのようなタイミングで作ったとしても、過去作のリメイクに対してはファン側からは必ずと言っていいほど賛否両論が巻き起こることになります。cali≠gariの場合、今回そこについてはどのようにお考えでしたか。 桜井青:そこはもう、どうやっても避けようのないお話になりますよね。 ーーつまり、賛否両論が出て来たとしてもそこは敢えて度外視していこう、というスタンスでいらしたということですか。 桜井青:そもそも、セルフカバーって絶対に過去を越えることは出来ないものであるって、はなから誰もがわかっていることだと思うんですよ。だって、過去に対する思い入れって人にとって特別なものじゃないですか。その曲が好きだった、そのアーティストが好きだったっていう事実もそうだし、その当時の自分がおかれていた環境とか、その当時の心境とか、不可要素も込みで“あの頃”に対する愛着が強くなっているわけですからね。その分、実際には思い出の内容に補正がかかっているとも言えるんですけど。 ーー思い出は必要以上に美しく見える、というアレですね。 桜井青:そうそう(笑)。そういう意味では過去の作品を越えるなんていうのは絶対に出来ないことなので、あくまでも『ブルーフィルム』はあのオリジナルのかたちで完成されてるんです。それに対しての『ブルーフィルム -Revival-』は「でも、これだってもっとイイでしょ?」っていう再提案ですよ。 ーー『ブルーフィルム -Revival-』と題されているだけあって、このアルバムでは過去の名画がデジタルリマスターによって色鮮やかに甦った感覚、に近いものが漂っているのかもしれませんね。 桜井青:あぁ、映画にたとえるなら最も近いのは市川崑が1976年に撮った『犬神家の一族』を30年後の2006年にまた同じキャストと同じ構図で撮り直してるじゃないですか?多分、感覚としてはあれに似てると思います。 ーー確かに!! 桜井青:別にアレンジを大幅に変えたとかそういうことでもなく、効果音なんかも当時のままだし、ギターの音なんかでいえば「今この音は出せないな」という部分は昔のトラックをそのまま使ったりもしているので、基本的な聴覚上はほぼ変わっていないんだけど、音全体から受ける印象自体はけっこう変わったよね、っていうとても面白い作品になってるんじゃないかと思いますね。懐かしさもあり、新しさもありで。そして、中でも1番変わったのはやっぱり歌なんですよ。 ーー間違いありません。それこそ“エロ”アルバムとしてのエロ度が格段に上がりましたし、より表情豊かで奥深い歌の世界が繰り広げられているように感じます。 桜井青:聴いてくれる方たちには、おそらくそういうところで満足していただけるはずです。 考え方の部分で当時よりもオトナになった気がしますよ(研次郎) ーー青さんの「1番変わったのはやっぱり歌」とのご発言を踏まえますと、秀仁さんとしてもこの仕上がりに対しては同じような手応えを得ていらっしゃいますか。 秀仁:えぇ、最初のと今回のでは全然違うでしょうね。 ーー確か、『ブルーフィルム』についはリリースから1年後の2001年に出たセカンドプレス盤で3曲ほどの歌を録り直しされていましたから、曲によってはこれで3回目のレコーディングになるのでしたっけ。 秀仁:そうですね。いずれにしても、20年くらい前といったら僕はまだ確実にコドモだったんで(苦笑)。ほんと、20年っていったら相当だなぁとあらためて感じます。 研次郎:自分の場合は、弾き方とか以前にまずは考え方の部分で当時よりもオトナになった気がしますよ。あの頃はまだ弾くことでイッパイイッパイでしたけど、今は弾くこと自体は別にどうでもいいというか(笑)。それよりも、どうやったら聴いてくれる人たちの心を動かせるのかな?っていうところを大事にするようになりました。 オトナになるといっても、単に丸くなっておとなしくなっちゃうのは違うと思う(研次郎) ーーいわゆるオトナの余裕が、音をこれだけ味わい深いものにさせているのでしょうね。 研次郎:オトナになるといっても、単に丸くなっておとなしくなっちゃうのは違うと思うんですよ。イイ感じで自分らしく、ちゃんと尖ったりもしてるオトナな音を出せていたら嬉しいです。 ーー結果的に、今作の中でcali≠gariがバンドとして放っている空気感の色合いや、プレイヤーそれぞれが放っている個性の濃度は、オリジナル版の時よりもブーストされているように感じますね。 研次郎:まさにワタシもそう思います。 1曲目にこういうカバーを持ってくるなんて、攻め攻めでいいなぁと(笑) (青) ーーところで。今回の『ブルーフィルム -Revival-』では、なんと1曲目にイタリアのSPANKERSによるヒットチューンのカバー「Sex on the Beach」が収録されておりますが。この大胆な構成には正直かなり驚かされました。ここに込めた思惑についても、教えていただいてよろしいでしょうか。 桜井青:もともとの1曲目だった「エロトピア」が、もうcali≠gari=「エロトピア」くらいの浸透度を持ったものになってしまっているし、かつては『SHOXX』さんのオムニバス盤でも1曲目に入れてもらっちゃったり、あと復活の時だって「エロトピア」からのスタートだったじゃないですか。あまりにもずっとそのイメージが染みついてきたので、せっかく新しく作るんだったら今回の始まり方はまた別のかたちにしたかったんです。当然、長年培われてきたお約束を壊すには勇気が必要ですよ?でも、こればっかりは自分たち自身で壊さないことには始まりませんからね。ここに関しても、「1曲目が「エロトピア」じゃないなんて!」という方はいると思いますけど、その一方で新鮮に感じるという方もいらっしゃるはずです。 ーー構成こそ違っても、1曲目を聴いた途端に強いインパクトを感じる!という意味でいけば、オリジナル版とRevivalは相通ずる志向性を持った作品だと言えるでしょうね。よりによっての「Sex on the Beach」というのが、完全に飛び道具的で秀逸です。 桜井青:2丁目のクラブなんかではまぁまぁ流行ってた曲なので(笑)、2012年くらいに良く聴いてたんですよ。なんか、半ば条件反射的に「キター!」ってなる曲なんですよね。カクテルの名前がついたセックスソングだし、なんとなく当時から「これをcali≠gariでカバーしたら面白いだろうな」っていう思いもありつつ、じゃあどこに入れるのか?となったら難しいところもあって、今回ちょうど「ここでしょ」ってなったんですよ。1曲目にこういうカバーを持ってくるなんて、攻め攻めでいいなぁと(笑)。他にこんなことやる人、誰もいないでしょ? ーーでしょうね(笑) 桜井青:まぁ、ライヴが始まる前にかかる場内SEみたいなニュアンスで聴いてもらっても全然いいと思いますよ。 20年ずっとセックスセックスってやって来てまだやるんだなぁと思いました(笑) (研次郎) ーー秀仁さんとしては、この「Sex on the Beach」についてどのようなモードで歌っていくことになりました? 秀仁:俺、クラブにも行かないし酒も呑まないんで、この曲のことは全然知らなかったんです。しかも、最初に聴いたのがオリジナルじゃなく青さんが作ったデモだったんで、なんか普通にcali≠gariの新しい曲として歌った感じですかね(笑) ーー俗っぽく薄っぺらいパリピチューンが、こんなにも毒々しく刺々しいものに仕上がってくるあたり、cali≠gariは流石だなぁとしか言いようがありません(笑) 研次郎:僕もこの曲のこと知らなかったんですけど、そんなに有名なんですか?? ーー特にクラブ通いはしておりませんが、それでも知っているくらいなので当時はある程度ヒットしていたんだと思います。 研次郎:へぇー。僕もちょっと、クラブ行ってるとか言ってみたいんですけどねぇ。行かないからわかんないし、とりあえず「またセックスの曲かー」と思って(笑)。なんだかんだで、20年ずっとセックスセックスってやって来てまだやるんだなぁと思いました(笑) 桜井青:あははは(笑) “エロ”アルバムになら何の気兼ねもなく入れることが出来たんですよ (青) ーーそれから。今作『ブルーフィルム -Revival-』には書き下ろしかつ録りおろしの新曲も2曲収録されておりますので、こちらについてもうかがって参りましょう。まずは、6曲目の「デリヘルボーイズ!デリヘルガールズ!」と9曲目「さかしま」についての解説をお願い出来ますでしょうか。楽曲のなりたちもそうですが、これまた置き所もなかなか難しかったのではありません? 桜井青:考えましたねぇ、凄く。まず、「さかしま」はとても美しい曲なので「ブルーフィルム」の前しかないなと思ったんです。「デリヘル〜」はねぇ…アナログレコードのB面1曲目みたいなイメージでいったら、「音セックス 2020」の後がいいだろうということで、ここにおさまりました。はい、ここからがアルバムの後半ですよ!という合図になってる曲ですね。 ーー「デリヘル~」に関しては、当初リリースを予定していた新作アルバムに入るはずだった楽曲ということになるのですよね? 桜井青:その可能性自体は一応ありましたけど、曲の性質的に実際はどうだったのかな?というのはありますね(苦笑)。次にもしアルバムを出すとすればそれは『15』になるわけで、そこに何のコンセプトもなしにこの曲を入れるっていうことにはならなかった気がするし。その点、“エロ”アルバムになら何の気兼ねもなく入れることが出来たんですよ。 今のコロナ禍の中ではこのくらいキャッチーで元気が出る感じがいいよね、って(青) ーーだとすると、「デリヘル~」がどのような背景を持って生まれてきた曲だったのか、ということもぜひ知りたいです。 桜井青:曲としては、前からなんとなく出来てたんです。ネタ的には性産業に関わっている人たちがわたしのご友人には一杯いるので、そこを描いているんですけどね。そりゃあ、昭和の昼ドラみたいに身体で稼いで借金を返さなきゃ!みたいな人もいることはいるんですよ。だけど、もっとポップに働いている人だって全然いるし、そういう人たちの話を聞いていると「なるほどねぇ」って感じることがいろいろあって、その感覚をいつか曲や詞にしてみたいなとずっと思ってたんです。 ーー音としては、レトロなニューウェーヴ感が漂っているところも粋ですね。 桜井青:アレンジがこのかたちになるまでには、5パターンくらい作りました。途中で、大沢誉志幸(現在は大澤誉志幸)の「そして僕は途方に暮れる」みたいな雰囲気になったこともありましたねぇ。あとは、もっといなたい感じになったこともあったし。わりとどれも良い感じではあったんですけど、最後は詞のテイストも含めて今のこのコロナ禍の中ではこのくらいキャッチーで元気が出る感じがいいよね、ってなったんです。 ーーコロナ対策の一環で、経産省の取り仕切っている事業者向け持久化給付金の対象から風俗関係者が除外されている現状や、それ以前に緊急事態宣言が発出されたことでもセックスワークを生業にしている方たちは相当に大きな打撃を受けたそうですからね。この派手なポップチューンは、そんな方たちへのエールソングにもなっているように感じます。 桜井青:そうなんですよ。今は少しずつお客さんが戻ってきているらしいんですけど、皆ほんとに一時は大変だったみたいで。音楽業界もそうですけど、こういう時でもとにかく元気を出してやってくしかないですからね。もともと『ブルーフィルム』の曲たちはどれも濃いけど、あんまり元気なタイプの曲はなかったら、新しい曲を入れんだったらこれがちょうど良かったんです。 秀仁くんがデリバリーヘルスを使ってないっていうのは皆わかりますもんね(研次郎) ーー秀仁さんはこの「デリヘル~」と、どのように向きあっていかれたのでしょう。聴いていては、どこか演じるようなスタンスで歌っていらっしゃるような気配も少し感じたのですけれど。 秀仁:いやー、そうだな。特別そういうことは考えてなかったです。歌いにくい感じのメロディでもなかったし、わりと解釈しやすかったんですよね。でも、どうやらそれがちょっと違ったみたいで。歌い終わった時には、「違う!」って言われました(笑) 桜井青:そんなことないから。そんなキツい言い方はしてないー(笑) ーーつくづく不思議だなと思うのは、この「デリヘル~」もそうですし、もちろん“エロ”アルバムですから艶っぽさや艶めかしさは様々な曲の随所から匂い立ってくるものの、秀仁さんの歌うエロティシズムな世界はどれも決して下品にはならないのですよね。ここもまた、cali≠gariならではの特性であり魅力であるとあらためて感じます。 秀仁:あぁ…おっしゃってることはわかります。ただ、俺は良い意味じゃなく自分でそう感じてるところもあって。 ーー…どういうことですか?! 秀仁:意外と何処にも行けない感じがあるんですよ。どんな曲を歌っても、自分の温度感しかないというか。下品になりたい時も、そうはなれないっていう…。そこが自分の持ち味だ、っていう風には最近だんだん思えて来ましたけど微妙ですよ。 ーー揺るがぬ個性を確立されているが故のお悩みなのですね。…難しい。。。 桜井青:“エロ”アルバムでエロを表現する、って言うと俗っぽくなっちゃうけどね。石井さんの歌い方は、エロティシズムの方だとわたしも思いますよ。エッチでもスケベでも卑猥でもない、エロティックな感じ。cali≠gariはそれでいいんじゃないですか。 研次郎:結局、それって桜井青が書いた詞を石井秀仁が歌ってるから下品にならない、っていうことなんだと思うんですよ。これを聴けば、秀仁くんがデリバリーヘルスを使ってないっていうのは皆わかりますもんね。 桜井青:うふふふふ(笑) 秀仁:…(失笑) 研次郎:そういう全く実体験には基づいてないところで、石井秀仁ワールドとして表現されていくこのエロな世界っていうのが面白いんですよ。そこがcali≠gariの醍醐味のひとつだと僕は思いますし、ファンの女性が聴いた時には「キャッ♡やだ、秀仁さんが青さんにこんな歌詞を歌わされちゃってる!」ってなるんじゃないですかね。 ーーある種の公開羞恥プレイですか(笑)。それはそうと、いちベーシストとして研次郎さんが思う「デリヘル~」についての所感もいただけると嬉しいです。 研次郎:いや、それはもう慣れたもんですよ。こういうタイプの曲は(笑)。特に指示もなかったですし、さらっといきました。 歌とギターだけでそう聴こえてるんだったら、これは成功ですよ。(秀仁) ーーでは、もう1曲の新曲「さかしま」についてもおうかがいします。こちらは秀仁さんの作詞作曲によるバラードで、幽玄なる音像と美しい言葉たちがひたひたと聴く者の胸に迫ってくる、極めて素晴らしい逸品ですね。 秀仁:究極にシンプルな曲を作りたい、そしてほかの作曲者たちとは絶対にかぶらない曲を、というところで作りだしたのがこの曲でした。アレンジ的に研次郎くんは全く参加しないかたちになってますが(笑)、シンプルを究めたらギターのリフしかない状態で完成しちゃったんですよ。多分、ライヴでやる時はまた別のかたちになっていくとは思いますが、これは自分からするとなんかこう…素っ裸みたいな曲になってます。 ーーそのせいなのか、ここからは背徳的・退廃的であるだけでなく静謐なるエロティシズムを感じられます。 秀仁:パッと見とかパッと聴きだとそうは思えないところもあるかもしれないですけど、この曲の詞にはいろんな元ネタがあってそれを寄せ集めてるんですね。具体的には澁澤龍彦(耽美派小説家)とかハンス・ベルメール(球体関節人形作家)の作品に通じるようなエロティシズムを僕なりに描いてます。 ーー「さかしま」というタイトルについても、よくぞこの言葉をピックアップしてくださったなと思いました。澁澤龍彦の著書名であると同時に、ここからはえもいわれぬ日本語の奥深さを感じますもの。 秀仁:そうですね。そこを感じていただけたなら嬉しいです。 ーーそして、この曲では繊細にして深遠な響きのギターサウンドも実に絶妙です。 桜井青:大変だったんですから、これ(苦笑)。ギターレコーディングのたった数時間前にコードが届いたんですよ? ーーそれは痺れますね。 桜井青:しかも、来たのが普通のコードならまだしもね。石井さんがここにつけてきたコードは、全然普通じゃないんです!普段、わたしは使わないのばっかりで(笑)。でも、今回そこは親切だったんですよ。コード表をつけてくれていましたから。「ギターのここを押さえてください」っていう指示表が。 ーー不幸中の幸いだったと。 桜井青:違うんですよ、そのコード表の音をどこで使ったら良いのかが結局よくわかんなかったので、そこからパズルみたいに「この押さえ方をするのはここかな?」「こっちはこれ?」って自分で当てはめていかなきゃならかったんです!今回のレコーディングで最も苦労した曲になりました。 ーーしかしながら、その甲斐あって「さかしま」は精緻な完成度を誇るものに仕上がったのではないでしょうか。 秀仁:よかった。歌とギターだけでそう聴こえてるんだったら、これは成功ですよ。 桜井青:あー、もう少し時間があればもっと上手く出来たのに(苦笑) それが出来るんですよ、今のcali≠gariなら ーー何をおっしゃいますやら。先ほども青さんがお話されていたとおり、この「さかしま」からラストの「ブルーフィルム」への流れは20年前に作られたアルバムの世界を再定義する意味で、本当に不可欠で重要なものに仕上がったと感じます。 桜井青:そこは本当にそうなんですよね。これは個人的な意見なんですけど、DEAD ENDの『shámbara』(1988年発表の3rdアルバム)で、最後の「I CAN HEAR THE RAIN」の前に入ってた「HEAVEN」っていう曲があったじゃない?あの並びを聴いた時に感じた「これは熱いっ…!」っていう感覚を、今回の『ブルーフィルム -Revival-』では最後の2曲で醸し出すことが出来たんじゃないかと思うんです。 ーーその感覚、なんとなくわかります。ギタリストのYOUさんが惜しくも6月にご病気で急死されてしまったこともあり、この流れは余計に沁みてきますね。 桜井青:これはもう、わかってくれる人だけにわかってもらえればそれでいいんです。 研次郎:今ってサブスクが全盛で、アルバム単位で聴くとか曲順がどうこうってあんまり重視されない時代ですけど、このアルバムに関しては出来れば曲順どおりにCDの曲間で聴いて欲しいですね。 ーー同感です。なんといいますか…最後まで聴き進めた時に流れてきた「ブルーフィルム」については、音の中に哀切と懐かしさと感動が交錯してきて、聴いているうちに胸がキューっとなってしまいましたもの。 桜井青:ありがとう。これ、最初に言い忘れてたんですけどね。セルフカバーをするバンドって、大抵はテンポを落としたがる傾向にあるんですよ。オトナの魅力だかなんだか知らないですけど(笑)。その点、今回の「ブルーフィルム」はテンポが原曲よりも上がってるんです。これは大事なところですよ。 ーーそれでいて、音の質感としては以前よりも格段に重くなっていませんか。 桜井青:それはほら、ドラムの音なんかも重めに作ってるし、研次郎くんもあの音で、何より石井さんの声質自体の線が昔より太くなってますから。ギターも、これはアンプ直結なんですよ。ドラムと「せーの!」で録って、1回しか弾いてない。それが出来るんですよ、今のcali≠gariなら。 研次郎:逆に言ったら、当時よくこんな曲を録れましたよね(笑) 秀仁:今回のと比べたら、前はちゃんと歌えてなかったって思いますよ(笑)。20年経って、ちゃんと歌えて良かったです。 ほんとなら、わざわざエロを打ち出すような年齢でもないのに(笑) (研次郎) ーーいずれにしても。今作『ブルーフィルム -Revival-』は、古参ガリストの方たちにもご納得いただける作品になったのではないかと存じます。また、現在はオリジナル盤が入手不可能であることを思えば新規ガリストの方にも激しくこちらを推奨したいところです。ぜひ盤を手にとって楽しんでいただきたいですね。名盤再び、とはまさにこのことを言うのではないかと思いますので。 桜井青:そう、盤はいいですよ。ぜひCDを買っていただきたいです。これはViSULOGさんの取材だからって言うわけでもないんだけど、ヴィジュアル系のファンって今の日本で最もちゃんとCDを買ってくれてる種族じゃないですか。握手の為とか、特典の為っていうのとはまた別にして、音源をより深く理解するための装丁やブックレットであることを認識したうえで、全てをひとつの作品として愛そうとしてくれる人たちですからね。そこの熱量はヴィジュアル系のファンがどこのファンよりも高いと思うから、純粋に凄いしありがたいなって思いますね。 研次郎:20年も経ってるのに、今こうして『ブルーフィルム -Revival-』を出せるっていうこと自体も幸せなことですよ。おまけに、20年経ってるのにしなびることなく“エロ”アルバムを作ることが出来て、エロい新曲も入れられたっていうのが素晴らしいじゃないですか。ほんとなら、わざわざエロを打ち出すような年齢でもないのに(笑)。そういう青さんって凄いなぁ、と僕は今さらながらに思いました。そんなcali≠gariのメンバーでいられることも幸せです。 桜井青:あれですよ。この20年で昔は知らなかったこともまたいろいろ知ったし、いろんなことを表現するうえでの心意気も持つことが出来るようになったから、今回は「デリヘル〜」みたいな曲も作れたし、こういうアルバムが出来たんだと思います。 俺も思うんですよ。俺以外のヴォーカリストだったら絶対ダメだろう、って。(秀仁) 秀仁:でも、今日の話で青さんが“性産業”っていう言葉を使ってたじゃないですか。俺はあれ、今この瞬間まで“生産業”だと勘違いしてたんですよ(苦笑)。そのくらいピンと来てないところがあって、アートとか文学の領域でのエロティシズムしか理解出来てないから、まだ足りないとこは多いですね(笑) 研次郎:えー(笑) ーーあっぱれですよ。秀仁さんらし過ぎるそのセンスが実に素敵です。あれからもう20年も経っておりますが、cali≠gariに秀仁さんという希有な存在感と才覚を持つヴォーカリストが加入してくださって本当に良かった、とここに来てまた感じてしまいました。 桜井青:いやー。それはきっと、石井さんが入る以前のcali≠gariのこともけっこう知ってるから出てくる言葉ですよ(笑) ーーもっと言えば、秀仁さんがいらっしゃらなければあれ以降の20年は、今のようなかたちでは続いて来なかったでしょうし。 秀仁:それはね、ほんと俺も思うんですよ。俺以外のヴォーカリストだったら絶対ダメだろう、って。 桜井青:あはは(笑) いつも以上に元気よくやらないと(秀仁) ーーさてさて。ここからは、少し今後のお話もさせていただこうと思います。『ブルーフィルム -Revival-』のリリースに付随するツアーとして、10月から11月にかけては名阪での[プライベート♥エロチカ 2020]と東京でのファイナル[クライマックス♥エロチカ 2020 ]と3本のライヴが控えております。このご時世でも、しっかりと敢行してくださるのですね。 桜井青:もちろん。内容についてはまだノープランですけど、とにかくやります!! 秀仁:いつも以上に元気よくやらないと、とは思ってますね。 研次郎:今回は観客動員もしつつ配信もするので、どちらのかたちでも皆に堪能してもらえるようにしたいです。まぁ、この状況が何時まで続くかわからないだけに、つい悲観的になってしまいがちなところはあるかもしれないですけど、そんな中だからこそ僕らとしては思いっきり楽しみますよ。

2020年9月30日 RELEASE / New “エロ” Album
『ブルーフィルム -Revival-』

詳細
【ポルノ盤】<CD+DVD>
VIZL-1799 / ¥5,000(+Tax)/ 初回スリーブ仕様

収録曲
[CD]
Disc-1「ブルーフィルム -Revival-」
M1. Sex On The Beach
M2. エロトピア
M3. ミルクセヰキ
M4. ポラロイド遊戯
M5. 音セックス2020
M6. デリヘルボーイズ!デリヘルガールズ!
M7. 真空回廊
M8. 原色エレガント
M9. さかしま
M10. ブルーフィルム

[DVD]
Disc-2「まる見え!ストリーミング♡エロチカ 2020 at Veats Shibuya 2020.07.07」
M.1 ゼリー
M2. エロトピア
M3. ミルクセヰキ
M4. 君が咲く山
M5. 37564。
s M6. せんちめんたる
M7. ポラロイド遊戯
M8. 発狂チャンネル
M9. ブルーフィルム
M10. 冷たい雨
M11. グッド・バイ
M12. サイレン
M13. 嘔吐
M14. Sex On The Beach
詳細
【ピンク盤】<CD>
VICL-65428 / ¥3,000(+Tax)

収録曲
[CD]
M1. Sex On The Beach
M2. エロトピア
M3. ミルクセヰキ
M4. ポラロイド遊戯
M5. 音セックス2020
M6. デリヘルボーイズ!デリヘルガールズ!
M7. 真空回廊
M8. 原色エレガント
M9. さかしま
M10. ブルーフィルム

<特典封入>
・ポルノ盤 / ピンク盤 ダブル購入キャンペーンコード封入
https://www.kyakusitsu.com/content1/?no=k5Fe3n6C3CFYCxSI33sVc7c
<チェーン別オリジナル特典>
https://www.kyakusitsu.com/content1/?no=35v23nvDC3FyCgSXS0sycPC

「ブルーフィルム -Revival-」Release
cali≠gari 東名阪ライヴツアー
「プライベート♥エロチカ 2020」

2020年10月03日(土) 名古屋ElectricLadyLand

2020年10月25日(日) 梅田バナナホール

cali≠gari 東名阪ツアーファイナル
「クライマックス♥エロチカ 2020」

2020年11月15日(日) KANDA SQUARE HALL
R指定 楓 solo project「KiD」
cali≠gari

1993 年結成。
現在のメンバーは石井秀仁(Vo)、桜井青(Gt)、村井研次郎(B)。

メジャーデビューは 2002 年、ビクター内のガイレコーズより。
約1年後の2003年、日比谷野外音楽堂でのワンマンライブをもって無期限活動休止。

その後、2009年に消費期限付き(期間限定)で復活。
これまたビクター内のフライングスターレコーズよりリリース。
この復活期は、シングル・アルバムセールスともに自己ベストを更新。ワンマンライブも日本武道館を完売するなど、復活前のスケールを大きく超えることになった。

期限付きでありながら活動は続き、2012 年に「活動休止の休止」を宣言。 しかし「ただいまインディーズぅ?さよなら、ビクターぁ?」と銘打ったツアーを行い、活動をメジャーからインディーズに移す。 以降、ドラムが抜け現体制になり今にいたる。

2019年にまさかの3度目となる復帰、ビクター内のビクターレコーズより「この雨に撃たれて」をリリース。 ボーカル・石井秀仁が加入して20年となる2020年は、2000年に発表された名盤かつ廃盤「ブルーフィルム」を新装した「ブルーフィルム -Revival-」をリリースする。