ViSULOG 2020年8月号 COVER ARTIST / R指定 楓 solo project「KiD」
無心に、無邪気に、純粋な気持ちで音楽やギターと向きあうことで生まれてくる音楽。今の彼がKiDとして表現していこうとしているものは、とにかく澄みきっていて美しく力強いものであるように感じる。

昨年末をもって凍結したR指定のギタリストである楓が、このたび起ち上げたソロプジェクトの名はKiDだ。童心に還るかのごとく、ただひたすらに自らの好きな世界を追求したという0st シングル『ククル』からは、楓の内包する奥深いポテンシャルと、あらたな魅力や可能性を感じとることが出来るに違いない。

初めて挑戦したというヴォーカルレコーディングにまつわるエピソードも含め、ここでは楓がたどってきた今に至るまでの経緯と、ここからに向けた率直な想いを訊くことが出来た。

取材・文:杉江由紀
凍結する1年前くらい前から、自分の曲を世に出したという気持ちはずっと持っていた 純粋に、せっかく作ったんだから聴いてもらいたいなと思ったんです ーーこのたび、楓さんはソロプロジェクト・KiDとしての初音源となる0st シングル『ククル』を発表されることとなりました。昨年末の両国国技館公演をもってR指定が凍結となって以降、ここに至るまでの流れをまずは教えてください。 楓(R指定 / KiD):実は、R指定が凍結する1年前くらい前からかな?自分の曲を世に出したいな、っていう気持ちはずっと持っていたんですよ。ただ、その時点ではどういうかたちでそれを出すかっていうことは決めてなくて、たとえばボーカロイドを使って発表をするとかでもいいし、リリースじゃなくYouTube配信でもいいんじゃないか、とかいろいろ考えてはいたんですけど。とにかく、自分の作っている曲に対しての自信はあったので、それを皆に聴いてもらいたいっていう欲求は日々どんどん高まっていた感じだった反面、自分の作る曲がR指定では使いづらいケースが多かった、っていうのも動機としては大きかったですね。純粋に、せっかく作ったんだから聴いてもらいたいなと思ったんです。 ーーその、“R指定では使いづらいケース”については、楓さんが自らそう感じられる場面が多かった、ということなのでしょうか?? 楓(R指定 / KiD):いや、そういうわけではないです。基本的に、R指定ではいつもマモが選曲の決定をすることが多くて、そういう場合に「曲としてはいいんだけど、今回のタイミングだとちょっと違うかな」とか「他の曲と並べた時のバランスを考えるとね」みたいになることが多かったというか。まぁ、でも自分としては「ちょうどハマった時に使ってくれればいいよ」っていうスタンスでしたからね。結果的に、そうやって使われないままの曲が溜まっていくことになった、っていう流れだったんです。あ、ただし今回シングル『ククル』に関しては入っている2曲とも新しく書き下ろしたものたちなんですけどね。 ーーそこはやはり、あらたなる門出を飾るのにあたってはまっさらなものをまずは呈示したい、という気持ちでいらしたということになりますか? 楓(R指定 / KiD):そういうわけではないです。そこまで別に、意気込んで「ここからソロでやっていくんだ!」始めたわけではないんですよ(笑)。もともとは、自分で写真集(Art Photo Book「我楽画-ガガガ-」)を作って出したりしていたんですけど、このコロナの関係でそれのインストアなんかも2本しか出来なくなってしまって、「さて、次は何をしようかなぁ…」と考えた時に、「ソロでもやってみようか」っていう気持ちに自然となりました、っていう流れでしたからね。 ーーちなみに、Art Photo Book「我楽画-ガガガ-」の内容と、今回のソロ音源が何かしらリンクしているところもあったりするのですか? 楓(R指定 / KiD):それは特にないですけど、あるとすればどっちも自分の好きなことを自由にやってます、っていうだけの話ですね。昔から、自分なりの表現欲求というものはずっとあるので、どっちもR指定では出来ないことをR指定の楓として好き勝手やってます、っていうことなんです(笑) 批判する人はするだろうし、何をするにしても5人での時と動とはいろいろ違ってくる ーーArt Photo Book「我楽画-ガガガ-」を完成させたことにより、アーティストとしての楓さんが得られた手応えとはどのようなものだったのでしょうね。 楓(R指定 / KiD):大抵ヴィジュアル系の雑誌で写真のページを作るとなると、とにかく綺麗に撮って、シワとかそういうのも全部ナシで!っていうやり方をするのが王道じゃないですか。なんか、そういうのはもうちょっと飽きたしつまんねーな、っていう気持ちになってた時期があったんですけど(苦笑)、その頃ちょうど違う界隈で仕事をされているカメラマンさんと出会うことが出来たんですね。そこ切っ掛けにして、ヴィジュアル系でも今までとは違う新しいアプローチの写真を撮って出していきたいな、という意識が生まれて「我楽画-ガガガ-」を作っていくことになったので、あの中では自分自身の内面に在るエゴとカメラマンの持ち味をぶつけあいながら、面白い作品を作ることが出来たんじゃないかと思ってます。自分を単にカッコ良く見せる為だけの写真っていうわけじゃなく、1枚のアートとしてそれぞれの写真を成立させることが出来たのが嬉しかったですね。そして、自分から発信して作品を仕上げていく、っていうあの経験は今回のシングル『ククル』を作って行く時にも活きたところがありました。なんか、自分で思っていたよりもフットワーク軽めにいけた気がします。 ーーある種の自信がそこで得られた、ということなのかもしれませんね。 楓(R指定 / KiD):ずっとバンドで活動してきたのもあって、ひとりで何かを発信するってやっぱり勇気も必要ですからね(笑)。批判する人はするだろうし、何をするにしても5人での時と動きはいろいろ違ってくるので、これまで3冊くらい出してきた写真集を作ってきた経験は、ソロプロジェクトを始める時にも“ひとりでやる”っていう姿勢をとるうえで凄く活きました。 当初はソロだけどバンド形態っていうやつをやるつもりだったんですよ ーーでは、ここからは実際にソロプロジェクト・KiDを起ち上げた際のお話もうかがって参りたいと思います。楓さんが、このシングル制作に向けて最初にとられたアクションは何だったのですか? 楓(R指定 / KiD):それがですね。もともとの話からすると、当初はソロだけどバンド形態っていうやつをやるつもりだったんですよ。あくまでも俺はギターが弾きたかったし、歌とかは誰かにやってもらって、作詞と作曲は全部俺がやるよ、っていうスタイルを想定してたんです。だけど、そう思ってたところにコロナが来ちゃって。これはヨソ様の人たちを巻き込めないな、となったわけです。 ーーなんとまぁ…そういうことだったのですか。 楓(R指定 / KiD):結局、バンド編成にするつもりだったから名前も個人名じゃなくそれっぽいものを考えなきゃということで、KiDにしようって決めてあったんですよ。周りくどい名前は面倒くさいし、楓なんでKDに自分自身を表すiを真ん中にいれてKiDにして、これだったら皆にとっても耳なじみの良い名前だよね、っていうことで。 自分は今でも充分、中二病なんで(笑) ーーと同時に、このKiDという名前には楓さんの中にある少年性や無邪気な心について投影された部分もあったりされます? 楓(R指定 / KiD):もちろん、それもあります。自分は今でも充分、中二病なんで(笑) ーーキャリアとしては、もう随分と長くなってきていらしゃいますけれどねぇ。 楓(R指定 / KiD):そこはあんまり関係ないですよ。むしろ、自分の場合は中二病なところを失っちゃったら音楽やる意味ねーかな、くらいの感覚がありますから。 おそらく、それで一番病んだのは俺だと思います ーー参考までにぜひ教えてください。楓さんがいまだに「自分のここが中二病だなぁ」と自覚されるのは、どのような場面が多いのですか? 楓(R指定 / KiD):それこそ病んでるところもあると思うし、病んでる人のことだってなんとなく理解出来るし、ヤンキー見るとニヤニヤするし、いろいろですよ(笑) ーーなにしろ、R指定ではそこを深く描いてきたわけでもありますものね。 楓(R指定 / KiD):おそらく、それで一番病んだのは俺だと思います。R指定を始めるまでは、いわゆる病んでる世界とは真逆なところにいたはずで、リストカットをしてしまうとか、死にたいと思う感情が湧いてしまうとか、そういうのって空想とかフィクションの世界の出来事だと思ってたんです。R指定をやるようになって初めて、「あぁ、こういうことが本当にリアルの世界にもあるのか!」って知ったんですよ。しかも、その世界をずっと見てきたことで共感?ともまたちょっと違うんだろうけど、それを否定することなく受け容れるようになった自分に気付いた、というかね。 この期間では、そういうものが凄くあからさまに見えた ーーそのうえ、この半年ほどは日本のみならず世界全体が暗い話題や殺伐とした話題だらけで、多くの人にとってメンタル的な病み要素が加速してしまいかねない状況が生まれているようにも感じます。 楓(R指定 / KiD):コロナの問題が始まってから、いろんなことに対する批判が生まれたり、聞きたくもないニュースが出回ったり、ヘンな風評が無理やり押し付けられるように流れたり、っていうことは増えましたよね。あと、仕事をする上でも人の人間性が凄い見えるようになったな、っていうことも結構ありました。皆それぞれ苦しい、っていうのはわかるんですよ。でも、だからこそ根っこの人間性が出ちゃうんでしょうね。この期間では、そういうものが凄くあからさまに見えたなって感じてます。 ーー飲食業界、観光業界などと並んで、エンタテインメントやショービズの世界は相当に大きな打撃を受けていますから、余裕ある思考や配慮の念を失ってしまう方が出て来てしまっているのでしょうね。 楓(R指定 / KiD):窮地に立たされた時ほど、人間ってイヤなところが見えてきちゃうじゃないですか。「あぁ、もうコイツとは仕事したくねーな」って感じることが実際にあったし、「こんな時なのに自分のことしか考えられないのかよ」っていう場面を、まさに目の当たりにしましたよ。 今の自分の感性や気持ちから生まれたものをそのまま皆に届けたかった ーーそれらの経験というのは、おそらく今回のシングルに収録されている「ククル」と「災難で」の歌詞に多少なり反映されているのではありませんか。書き下ろしの新曲たちであるというだけに、今年に入ってからここまでの時間の中で楓さんが感じてこられたのであろう思いたちが、ここには言葉としてちりばめられているように受け取れます。 楓(R指定 / KiD):えぇ、そうですね。さっき言ったみたいにストックの曲はたくさんあるんですけど、今回は今の自分の感性や気持ちから生まれたものをそのまま皆に届けたかったんです。 ギリギリまで自分で歌うのはヤだなーと思ってました(苦笑) ーー詞については、のちのち個々の楽曲についてのくだりでさらに詳しく伺うことにしたいと思いますが、一方で曲作りや音作りの面について今回の楓さんが特に意識されていたことは何でしたか? 楓(R指定 / KiD):レコーディングに関しては、曲を作っていた時に思い描いていたのはバンド編成でライヴをする、っていうイメージでしたね。 ーーレコーディングは具体的にどこからどこまでの範疇を差していらっしゃいます? 楓(R指定 / KiD):歌ってギターを弾いて、リズムは打ち込みですね。 ーーなるほど。もちろん、R指定でもコーラスはとられていたわけですけれど、KiDでメインヴォーカルをとることになった時、楓さんはどのようなヴォーカリスト像を目指されることにされたのです? 楓(R指定 / KiD):とりあえず、ギリギリまで自分で歌うのはヤだなーと思ってました(苦笑)。だから、この自分で歌うっていうのはもう苦肉の策みたいなもんだったんです。当然、そんなヴォーカリスト像なんて描けてなかったですよ。とはいえ、こういう状況になっちゃったんでね。まぁでも、結果的には良くも悪くもっていうことだったのかなぁ。 ーー謙遜されすぎですよ(笑) 楓(R指定 / KiD):周りからは、最初から「ソロプロジェクトなんだから絶対に自分で歌った方がいいよ」って散々言われてたしなぁー。俺としては、自分は歌ヘタだからちゃんとした人に歌って欲しかったし、そうすることで曲はちゃんと完成するんだって今この瞬間になっても思ってますけど(笑)、それでもこれはこれで今回の自分が出来る最大限のかたちだし、良かったのかもしれないですね。あとはやっぱり、ファンの皆に対しての恩返しをするという意味や、今こうして音楽を楽しんでるよっていう事実を伝える意味でも、自分で歌って良かったなと思います。「歌ってくれて嬉しかった」っていう声をいただくので、そこはちょっと安心もしました。でも、可能性をもって拡げるという点では絶対的に歌唱力が必要なんですよ。 録ってみたら意外と自分の声って自分の曲にハマってるのかな、って ーーということは。今回のレコーディングに向けて、楓さんはボイトレなどをされたりもしたのでしょうか? 楓(R指定 / KiD):一秒もしてないです(笑) ーー歌うこと自体はお好きなのですか? 楓(R指定 / KiD):好きじゃないです(笑)。カラオケも行かないです。 ーーそれでいきなりヴォーカルレコーディングというのは、難易度が高すぎません?! 楓(R指定 / KiD):そりゃもう大変でしたよ(苦笑)。今回ヴォーカルのディレクションをしてくれた人がもともとヴォーカリストだった方なので、彼に歌い方とか喉の開き方とかを、その都度アドバイスをもらいながら録っていくことになりましたから。「こういうフレーズだったら、舌の動かし方はこうした方がいい」とか凄く丁寧に教えてもらえました。 ーーそれは心強かったことでしょうね。 楓(R指定 / KiD):大分そういうアドバイスで、歌のクオリティは変わったと思います。レコーディングを始めるまでは腹式呼吸さえイマイチよく分かってなかったんですけど(笑)、今回はそこも生まれて初めて意識しながら歌ってみましたから。そして、録ってみたら意外と自分の声って自分の曲にハマってるのかな、っていうことを感じたり出来たんですよ。 ーー確かに。表題曲の「ククル」にしても、カップリングの「災難で」にしても、楓さんの声色や歌い方も全て込みでひとつの風景がそこに生まれている印象があります。 楓(R指定 / KiD):そこは救いでした、本当に。こういうかたちで作品として残す意味はあったな、って自分でも思えたので良かったです。 ーーなお、今回はMVも作成されている「ククル」ですが、こちらの楽曲を今回の表題曲として選定された理由は何でしたか。 楓(R指定 / KiD):この「ククル」は、R指定の凍結が決まった時の心境を素直に出したものだからです。 詞を書いてたのは、今年の4月くらいでしたね。要は、あの凍結ってけっこう緊急で決まったことだったので、年末に両国が終わってからしばらくの間はあんまり予定もなく過ごしてたんですよ。やってたのは、写真集に向けての動きくらいで。そこからまた少し経って、「ずっとこのままでいるわけにもいかないな」となって、ソロのための曲を作りだしたのが春になってからのことだったんです。 多分これは「楓っぽい」って思われる曲なんじゃないかと思います ーーところで。曲調という面からいくと、「ククル」は透明感や清涼感のようなものを漂わせた雰囲気に仕上がっている印象なのですが、そこはご自身でも意識されていたところだったのですか? 楓(R指定 / KiD):うん、それはありました。それに、ああいう曲調が俺は本来的に好きなんですよ。R指定で自分が作ってきた曲を聴いてきた人たちからしても、多分これは「楓っぽい」って思われる曲なんじゃないかと思います。もっとわかりやすく言うと、いわゆるオシャレコードが好きなんです(笑) ーー小粋なコード感は、確かにこの曲の中で前面に出ておりますね。 楓(R指定 / KiD):逆に、R指定の曲に多いゴリゴリなリフ物とかを俺が作ろうとすると、めちゃめちゃダサくなっちゃうんです。我ながら、「センスないなー」って感じちゃいますから(苦笑) 「俺の弾くフレーズを全て聴いてくれ!」っていう気持ちで作ってます ーーそれらのオシャレコードたちについては、振り返ると何時どのタイミングで楓さんの中に刷り込まれたものなのです? 楓(R指定 / KiD):ギターを始めてからある時期までは、一応コードは押さえてるけどそれが何なのかは「よく知らねー!」っていう状態だったんですよ。全て感覚だけでやってましたから。 ーー理論抜きでも成立していたとなると、それも凄いことではありますね。 楓(R指定 / KiD):だけど、ある時期から「ちゃんと知識としてもコードを身に着けたいな」という気持ちが出て来たんですよ。その時期は1年間くらいギターの家庭教師をつけてたこともあって、そこでジャズとかそっち系のオシャレなのを教えてもらったら、「あぁ、俺こういうのが好きだったんだな」って気付くことになったんです。あれが3~4年くらい前だったことになるのかな? ーーそこそこ最近とも言えますね。 楓(R指定 / KiD):俺、遅かったんですよ。ギターとちゃんと向きあうようになったのが、ほかの人から比べるとね。根本的には昔からオシャレコードとかも好きだったんでしょうけど、知識や技術がないからそこまでたどり着けてなかった、っていうことだったんだと思います。 ーーいずれにしても、3~4年前の“気付き”が今ここに来て花開いたというのは実に素晴らしいことかと。 楓(R指定 / KiD):難しいんですけどね。オシャレなコードって、使い過ぎちゃうと却ってインパクトがなくなっちゃうから。それでも、ここに来てちょっとずつ自分の理想に近付いていけてる気がして、今はほんとに音楽が楽しいです。 ーー楓さんは今、音楽とまさに正面から向き合われているからなのでしょうか。今回のシングルについては、「ククル」に限らず2曲とも音づくりの面でもクリアでシンプルな質感を大切にされているようですね。 楓(R指定 / KiD):そうなんです、そこもかなり意識してます。エフェクターをかけて音をいじるとかではなく、なるべくギターの持っている素の音の良さを引き出したかったんですよ。ギタリスト・楓の作品として出すわけだから、細部の音までちゃんと全て明確に聴こえるようなものにしたかったんです。「俺の弾くフレーズを全て聴いてくれ!」っていう気持ちで作ってます。 敢えてキッチリと作り過ぎなかったところもある ーーもっとも、そのような作り方をしていくとプレイの精度としては相当にシビアなレベルを要求されていくことになりませんか。 楓(R指定 / KiD):シビアだったし、実際この音源でも後から聴くと「ちょっとここ気になるな」っていうところは若干ありますね。だけど、そこも「この粗さは粗さでわりと良い味になってるよね」っていう話もエンジニアと今回レコーディング中にしたんですよ。敢えてキッチリと作り過ぎなかったところもあるんです。 ーー今の世の中、音の加工や編集なども自在に出来てしまうものですけれど、人間的な温かみを重視されたわけですね。 楓(R指定 / KiD):いやほんと、キレイにピシッと作ろうと思ったらなんぼでも出来るんで(笑)。どんな粗い録り音であろうと、好きなだけ盛れますよ。でも、自分が作るんだとしたらやりたいのはそういうことじゃないですからね。 ーー服に例えるなら、楓さんの作られる音楽は化繊プリント生地を使った大量生産系のものではなく、生成りの生地で作った手作りの1点もの、というイメージですよ。 楓(R指定 / KiD):ずっと一緒に仕事をしてきてて、他でもいろんな方と仕事をしてるエンジニアさんからは、「これは良い粗さだよ」とか「勢いがあるし、感情が出てていいね」とかって言ってもらえたので、そういった言葉に背中を押してもらえたところがありました。それに、自分の中の初期衝動をダイレクトに伝えたかったという意味では、おそらくこれが正解だったんじゃないかなとも思います。 そう、彼のことです(笑) ーーそんなこの楽曲には、「ククル」というタイトルが冠せられておりますが。この言葉を選ばれた理由についても教えてください。 楓(R指定 / KiD):この詞は自分の気持ちを描いたものなので、そのことを象徴するような言葉として何かいいものはないかな?と調べてたら、このククルっていう沖縄弁の言葉を見つけたんですよ。どうやら、心とか精神を意味してるらしいです。 ーー知りませんでした。きっとココロが訛ってククル、となったのでしょうね。 楓(R指定 / KiD):響きとして、ちょっとカワイイ感じがするのもいいなと思って(笑)。直球で「精神」とかは違うよな、という気持ちもあったので良い言葉が見つかって良かったです ーーそういえば、この詞の中には〈アイツみたいに歌えないけど〉という気になる1節が出て来ますけれど…やはりこれはあの“彼”のことですか? 楓(R指定 / KiD):そう、彼のことです(笑)。R指定ではよくライヴでマモから無茶ブリをされて、いきなり「歌えよ!」ってネタみたいな即興ソングとかをよく歌わされてたから(苦笑)、ファンの皆も「楓はバカでヘタだ」みたいなところで笑ってくれてたっていうのはあると思うんですよ。だけど、今回なんとか頑張って真剣にやってみたらちゃんと出来たぞというところで、〈アイツみたいに歌えないけど〉俺は俺でこんな感じでやれてるよ、っていうことを伝えたかったんですよ。 そこはまだ見つかってないし、これからでしょうね ーーまた、先ほど「「ククル」は、R指定の凍結が決まった時の心境を素直に出したもの」というお言葉がありましたけれど、この詞は揺れ動く心模様の描かれ方も繊細で絶妙ですね。〈あの時描いた夢はまだここにありますか?〉という問いかけから始まるところも、なんだか鮮烈に感じます。 楓(R指定 / KiD):正直、凍結に関しては最後まで俺は止めようとしてた立場だったし。その分、凍結になってしまった時は悲しくもあったんですよ。そのフレーズは、そのこと自体や当時いろいろと考えてた「そもそも自分はなんで音楽を始めたんだろう?」っていうところから出て来たものでした。「それで、俺はここからどうなりたいんだろう?」とかね。そのへんの気持ちがこの詞には出てるんです。 ーー「ククル」の詞を完成させることで、結果として楓さんがご自身なりの答えをみつけることは出来たのでしょうか。 楓(R指定 / KiD):そこはまだ見つかってないし、これからでしょうね。R指定を10年やって来て、その間にはもちろんいろんな経験もして来ましたけど…今の自分は、もう1回アーティストとしての原点に戻って「大きい音を出せて楽しい!」とか、「バンドって面白いよね!!」ってキャッキャしちゃう感覚をあらためて味わいたい、というところでソロを始めてますから。KiDでならそれが出来る気がしているので、全てはここからですね。 俺はあくまでも“R指定の楓“でありたいんです ーーKiDでの活動は、楓さんにとって非常に重要なものになっていきそうですね。 楓(R指定 / KiD):まぁ、R指定の方がどうなるかはまだ全然なにも決まってないですけど。でも、もしまた集まって皆でやれる日が来るのであれば、その時は絶対「個人活動をして良かったね」っていう風になりたいんです。 ーーあらたな経験を糧にして、次なる未来へ繋げることが出来たら素敵ですものね。 楓(R指定 / KiD):それにKiDとしての活動をしていようと、俺はあくまでも“R指定の楓“でありたいですからね。ずっとR指定の下手ギター・楓でいたいからこそ、今はKiDとして活動をしていく必要があるわけなんです。いつかは全てをつなげられるように頑張りたい、っていうことなんですよ。 どちらも、自分の中では全て根底でつながってるものですもん ーー楓さんからは、今しがた「R指定を10年」という言葉が出て来ていましたけれど。その表現は、カップリング曲「災難で」の歌詞にも〈10年の歳月は色褪せないまま〉というかたちで出て来ておりますね。 楓(R指定 / KiD):この詞はファンの人たちも含めて、いろんな目線から見てそれぞれの解釈が出来るところがあるとは思うんですけど、それぞれの人たちにとってのR指定というものに一旦区切りをつけて、俺もここから前を向いて進んでいかないとな、っていう内容です。 ーー「ククル」も楓さんにとってのリアルを描いていたものでしたが、「災難で」というこの曲タイトルについては、まさに今のコロナ禍を指したものになりますか?? 楓(R指定 / KiD):コロナがなかったら、この曲は出来てなかったですね。感覚的には、「ククル」が凍結が決まった直後の自分の心境で、「災難で」はそこからひと晩寝て目覚めたらこうなってたんですが、っていう歌詞ですよ。なかなか物事って思い通りにはいかないものだなぁ、っていう愚痴に近い(苦笑) ーーここでの〈今日も誰かが人をやめた〉という表現には、複雑な思いを感じたしまったところもありましたけれどもね。 楓(R指定 / KiD):そこの表現は誰かが死ぬとかそういう意味というよりも、誰かの不祥事をぶっ叩いたり、誰かを誹謗中傷とかすることで自分をアゲたりするような人たちのことを指したものですね。それってもはや、人をやめてるってことにならない?っていう意味です。 ーー特にネットの世界では、自らの正体や素性を隠しながら言論暴徒やお気持ちヤクザと化してしまい、時に人間性をもかなぐり捨ててしまっているように見えるケースがたまにありますものねぇ。 楓(R指定 / KiD):俺、SNSは始めるのも遅かったし途中で一回ヤメたこともあったんですよね。情報を広く速くたくさん得るには凄く便利だけど、精神衛生には良くないことが多いから好きじゃないんです、SNSって。まぁ、やらないと拡がらないというのも分かってはいるので、最近はある程度の距離を保ちながら付きあってはいますけど。誰かを庇うがあまりに身勝手な正義でその人がまた別の誰かを傷つけたりとか、そういうおかしな矛盾が生まれてることに疑問を感じちゃいます。 ーーそのような世相を移しだしていることもあり、「災難で」の詞は極めてカオスな内容なのですけれど、それでいてと曲調としては美しさと優しさをたたえたものになっているところがこの曲はとても不思議ですね。「災難で」からは、そのテーマに反してポジティヴな姿勢を感じることが出来ます。 楓(R指定 / KiD):あ、ほんとですか?自分的には、すげー良い曲出来たら聴いてくれ!っていうだけの話ではあるんですよ(笑)。なにしろ、今回のシングルはKiDとして最初のアイテムですしね。どっちの曲もですが、出し惜しみはせずに自分が良いと思うものをそのままかたちにしました、という作品になってます。自己満足したかったわけでもなく、自信を持って「これいいでしょ?」って皆におすすめ出来るものを作りました。 ーーこれは個人的見解なのですが。コアな指定ギャの方たちは別として、R指定をタイバンなどでしか観たとこがないくらいのライトユーザー層からすると、KiDのこの作品は「えっ。ちょっと待って?R指定の人ってこんなに爽やかな曲をやるの??」と感じてしまうくらいのインパクトを持ったものに仕上がったのではないでしょうか。 楓(R指定 / KiD):それ、SNSでも言われてました(笑)。先行配信とかで聴いたり、YouTubeにあげたMVを観た人たちが、「意外だった」って言ってて。「R指定の人がこういう曲を作るの?」っていう意見が出るのは、俺からすると良かったなと思ってるんですよ。それって褒め言葉だし、R指定としての可能性も拡がるんじゃないかなと思いますから。KiDとしての活動で、R指定に還元が出来たらそれは純粋に嬉しいです。あ、あとは「KiDは好きだけどR指定はキライ」とか「R指定は好きだけどKiDは好きじゃない」っていう人も全然いていいと思ってます。どちらも、自分の中では全て根底でつながってるものですもん。 当面はのんびりと曲を出して行こうかな、と今は思ってます どれだけ自分が楽しくやれるかを手探りしつつも、どんどん追求しながら成長していきたい ーーこの0st シングル『ククル』を完成させることが出来た今、楓さんとしては未来に向けてどのようなヴィジョンを描いていらっしゃいますか。 楓(R指定 / KiD):そこは0st シングルなんでね。次の1stではいよいよ誰かに歌ってもらうっていう選択肢もアリだなとは思いつつ、コロナのせいでどうなるかはまだわからない、っていうのが現実でもあるというか(苦笑)。もともとはライヴをする予定だったけどそれも今はなかなか難しくて、最近は皆さん無観客とかで配信ライヴをされてるとはいえ、俺としてはそこまでしてやりたいわけでもないんですよ。 ーーそこはお察しいたします。KiDとしての初ライヴがいきなり無観客、というのはどうしても辛いところがありますものね。 楓(R指定 / KiD):だとしたら、当面はのんびりと曲を出して行こうかなと今は思ってます。それを俺が歌ってるのか、誰が歌ってるのかは、自分でもまだわからないし、全てはその時の状況とその状況に対して自分がどう考えるか、っていうところで変わってくるんじゃないかな。あとは、どれだけ自分が楽しくやれるかっていうところを手探りしつつも、どんどん追求しながら成長していきたいです。 ーーKiDだけに? 楓(R指定 / KiD):まぁ、そんなとこですね(笑) ーー…はっ!もしや。このKiDという名前は、R指定ともかかっていたりします?? 楓(R指定 / KiD):ん?かかってるってそれはどういう意味ですか?! ーーR指定とは成人指定を意味する言葉であって、コドモであるKiDは成人に至る前段階の状態を表す言葉ですのでね。明確な相関関係を意識されていたのかと思いまして。 楓(R指定 / KiD):うわー、そこまでは考えてなかったな。でも、それイイっすね! ーー深層心理的なところでは、そこを意識されたうえでKiDと名付けていた可能性もあるかもしれませんよ。 楓(R指定 / KiD):そっかー。ってことは、やっぱり俺の根本にはどうやってもR指定があるってことなんだろうな。今度からその解釈、ちょっと使わせてもらいます(笑)

2020年8月12日 RELEASE / 0th SINGLE
『ククル』

詳細
【初回限定盤】<CD+DVD>
KDR-000-A / ¥1,800(+Tax)/ CD2曲+MV

収録曲
[CD] 1. ククル
2. 災難で

[DVD]
ククル MUSIC CLIP+メイキング
詳細
【通常盤】<CD>
KDR-000-B / ¥1,300(+Tax) / CD2曲

収録曲
[CD] 1. ククル
2. 災難で

2020年7月20日よりiTunesにて先行配信開始
https://linkco.re/q7z40d5e

<INSTORE EVENT>

09月12日(土) little HEARTS.新宿店

09月26日(土) ライカエジソン東京店

10月31日(土) 自主盤倶楽部

R指定 楓 solo project「KiD」
R指定 Gu.楓 solo project「KiD」

2019年12月29日R指定十周年記念単独公演ツアー「CLIMAX47」ツアーファイナル「東京両国国技館」公演にて、R指定は凍結(活動停止)。

その活動休止を受け、2020年7月にsolo project「KiD」を始動。