ViSULOG 2020年2月号 COVER ARTIST / HOLLOWGRAM
COMING SOON!!
芸術性とドラマ性に彩られた、素晴らしい映画を1本見終わった時のような感覚。今年1月に結成6周年を迎えたばかりのHOLLOWGRAMがここに完成させた初のフルアルバム『Pale Blue Dot』を聴いて得られるのは、まさにそれに近い感慨だ。

今この時も果てのない旅を続けている、無人惑星探査機ボイジャー1号が宇宙空間から地球を撮影したその貴重な写真に、Pale Blue Dotという言葉が冠せられることになったのは1990年のことであったという。

その時点においては人類が初めて眼にした“最も遠い地球”の姿。これをひとつのモチーフにしながら、HOLLOWGRAMが描き出す深き宇宙の世界に一体あなたは何をみるだろうかーー


取材・文:杉江由紀
『今回は視点を向ける先を人間ではなく、宇宙に向けてみることにしたんです』 ――このたび完成したフルアルバム『Pale Blue Dot』は、コンセプチュアルな仕上がりとなっている印象です。今作については、既に制作に入る時点からバンド内においてなにかしらの明確なヴィジョンが掲げられていた、ということになるのでしょうか。 ryo:当初の言葉としては、「アルバムを作ろうか」という話くらいしかしていなかったですね(笑) Yumeji:僕なんかは、最初のうちフルじゃなくてミニアルバムを作るのかな?くらいの気持ちでいました(笑) ――だとすると、制作が進むごとに曲数が増えていったわけですか。 ryo:えぇ、そうですね。このアルバムには以前ライヴ会場で配布した「Paint in water color」と「遠鳴り」の2曲を一部再録というかたちで収録をしているんですけど、そのほかは全てこのアルバムの為に作った曲たち、ということになります。 ――ちなみに、アルバムの発売に先駆けては昨年10月に「Blind Watchmaker」 、11月には「誑人」、12月に「The deluge」、さらに今年1月には「Flood of love 」と、ここのまでに計4曲が配信されております。やはり、これらが制作されていた過程の中で、よりアルバムにに向けての方向性が固まっていったところもあったのでしょうか。 ryo:タイミング的なことで言うと、「誑人」を発表して「The deluge」を作りだしたくらいの時期にそこは定まりました。メンバーにもA4用紙1枚分くらいの文章にまとめて、次のアルバムのテーマについて自分が考えている構想を伝えたんですよ。そのうえで、「あとは各自が自由に作っていってください」っていうことも言いましたね。 ――そのA4用紙に、一体どのようなことが書いてあったのだろう?という点が非常に気になります。 ryo:まずは今回のアルバムタイトルについてなんですが、『Pale Blue Dot』というのはボイジャー(無人惑星探査機)から写した地球の写真を表す言葉なんですよ。 ――1977年に打ち上げられたボイジャー1号が、1990年に撮ったその写真はその時点において人類が初めて眼にした“最も遠い地球”であったそうですね。 ryo:振り返ってみると、これまでのHOLLOWGRAMは楽曲の中で季節の移り変わりであるとか、人の死生観について描くことが多かったんですけどね。今回は視点を向ける先を人間ではなく、宇宙に向けてみることにしたんです。その象徴として出て来た言葉が『Pale Blue Dot』で、この作品の中では“未だ見ぬ果て”というものについて描いていくことにしました。 ――なるほど、そういうことでしたか。 ryo:それに、HOLLOWGRAMはそもそも質量のないもの…つまり愛であったり、感情であったりをずっと表現してきたバンドでもありますしね。そこの部分では、今回の“未だ見ぬ果て”というテーマとはどこかで通ずるところがあったんです。というわけで、さっきの話に出たA4の紙にはそんなようなことをまとめて書いたんです(笑) 『どんな曲が出来たとしても、4人が演奏すればHOLLOWGRAMの世界が出来あがっていく』 ――では、そんなryoさんからのご意向を受けて、各メンバーの皆さんはそれをいかにして音や作品に反映させていくこととなったのでしょうか。 一也:自分にとっては、コンセプトに沿って曲を作っていくということは初めてのことでしたからね。多少の模索をしながら作っていったところはありましたけど、ryoさんからコンセプトについて聞いたうえで音のアプローチを特に大きく変えたのは「柳暗花明」でしたね。元のかたちよりも、より正解に近付けた気がしてます。 Yumeji:僕は今回「Flood of love」と「誑人」、そして「With you 」を作曲しましたが、全体的なリズムの感覚とか音の雰囲気とか、いわゆるHOLLOWGRAMの音楽的な核というのは80%くらい一也くんが担ってくれているところでもあるので、自分としてはその範囲外に位置するような曲を意図的に作っていった感じだったんですよ。あまり悪目立ちしないように気をつけながら(笑)、差し色を加えていきました。 ――そうして各曲が出来上っていった中、Shinyaさんとしてはどのような手応えを感じていらしゃったのかも教えてください。 Shinya:今回に限らず、いつものことなんですけどね。どんな曲が出来たとしても、我々4人がそれぞれに手を加えて演奏すれば自然とHOLLOWGRAMの世界が出来あがっていくので、そのことに対する確信や手応えは最初から間違いなくありました。そういう意味では、別にそんなに予想外だったことはなかったとも言えます(笑) 『この詞たちはパッチワークのようなつくりになっているんですよ』 ――今作中に漂う一貫したテーマ性や、調和のとれたこの独特な世界観は、確かにHOLLOWGRAMならではの色彩で描かれたものだと言えそうです。そして、それを醸し出しているのはryoさんの書かれている歌詞の力によるところも大きいかと思われます。個々には独立性を持ちつつも、一方ではそれぞれの詞が絶妙な相関関係を持っているように感じられるところも興味深いです。 ryo:分かりやすく言うと、この詞たちはパッチワークのようなつくりになっているんですよ。基本的には楽曲単位で1枚絵のような詞の書き方をしているんですけど、それを縫い合わせていくことで実は「こことここの柄がつながっている」とか、全体として見ても1枚の作品として成立としている、というかたちになるようにしていったんです。だから、わざと同じ単語を別々の曲で使ってたりしてるんですよ。 ――この作品を聴いてくださる方々には、是非そこも楽しんでいただきたいものですね。 ryo:フルアルバムという、このボリューム感で作品を出すこと自体がHOLLOWGRAMにとっては初めてのことでもありますし。聴いてくださる方たちには、それぞれからの見る角度や聴き方によって異なる感覚を得てもらえたら嬉しいです。 ――バンドにとって初のフルアルバム、ともなりますと。もしや、制作中には難関ポイントなどもあったのでしょうか。 Yumeji:凄く大変でした(苦笑)。アルバムの前には、4カ月連続で配信っていう流れもありましたからね。これは今だから言えることですけど、あの1曲目の配信をした時はアルバムの曲どころかそれ以降の配信曲も全くできていなかったんですよ。 ――そ…それは怖い。 Yumeji:僕も怖かったです(笑)。しかも、1曲目の「Blind Watchmaker」はテイスト的にも冒険というか、一也くんとしても新しい挑戦をする気持ちで作った曲だったと思いますしね。もちろん、作品としては納得したうえで出したんですけど、聴いてくれる人たちがどんな風に受け止めてくれるのかは、なかなか未知数なところもありました。ほんと不安で、この曲に関しては一也くんと2時間とか3時間とか電話で話しあいましたもん! 一也:ありましたね、そういうこと(笑) 『僕らが作っているのは音楽であり、芸術なので、しっかりとした筋を通しておきたい』 ――従来のHOLLOWGRAMが持ってきた、マニアックで憂いを含んだ音像というパブリックイメージからいけば、確かに「Blind Watchmaker」はHOLLOWGRAM流のスタイルは固持しながらも、キャッチーさ強調した楽曲となっているとは思います。 Yumeji:やればやれるんだけど、HOLLOWGRAMとしては、敢えてやらないで来たところに思い切って踏み込んだ感じですかね。 ――それだけ踏み込んだ曲調を前提としたうえで、ryoさんは「Blind Watchmaker」の詞をいかに仕上げていかれたのでしょうか。 ryo:「Blind Watchmaker」というタイトル自体は、『利己的な遺伝子』(リチャード・ドーキンスによる生物論の書籍)の作者の別の本からの引用なんです。これは哲学的な発想やモチーフを、HOLLOWGRAMの世界に組み込むことで生まれた歌詞なんですよ。メロディの良さや明解さを大事にしたかったので、単語としては意識してわかりやすいものを使っているんですが、内容としては“命の起源って結局まだ誰も知らないじゃん”という、答えのないものになっているというところがひとつの仕掛けになってます。つまり、決してこれはセルアウトしたものではないよ、ということですね。 ――それから、今作においてはSE「- pale blue dot- 」明けの実質的な1曲目として「パラドクス 」が収録されております。この楽曲に託した役割があったとするならば、それはどういったものになるでしょうか。 ryo:歌詞とタイトルに込めたのは、“この世界は何層にもなった違う世界で構成されている”ということを仮定しての逆説ですね。それはアルバム全体のことも示唆したメッセージで、個々の楽曲のカラーや雰囲気は違うけれども、そのひとつずつが違う層となり重なっているということを表しているんです。 ――なんとも深いお話ですね。 ryo:まぁ、オカルト的な要素も含んではいるものの、宇宙について描くうえで今回は超ヒモ理論だったり、ホログラフィック原理というのもエッセンスとして入れていきました。つまり、俺の考える宇宙というのは流転していくものなんですよ。この話をしだすと長くなってしまうんですが(苦笑)、死生観とか人間っていうテーマとは一旦ここで離れたつもりでいたのに、結果としてはこのアルバムを作り進めていくうちに“命って何?”っていうところにつながってしまったんですよね。こうして生きているからには死ぬまで生き続けなければいけないのは事実で、“じゃあ、自分は何の為に生まれてきたんだろう”みたいな、普遍的な疑問に今回もたどり着いてしまったところがあるんです。 ――なんだか、その1周廻って戻ってくる感じはあたかもメビウスの輪のようですね。 ryo:このアルバム『Pale Blue Dot』では、その無限の地獄から抜けだすにはどうしたらいいのか、ということを求め描いたものなんです。 ――ryoさんは、日ごろからそんなにも難しいことを思考されている方なのですか?? ryo:普段は別にそんなことないですよ(笑) Shinya:もし普段からそうだったら、俺はちょっとつきあえてないです(笑) ryo:作品を創作するとなると、意味が自分の中で咀嚼できていないとダメなんです。そこはきっと、一也が曲作りをするのとも近いんじゃないかと思います。なんとなく「カッコいい感じだからこれでいいよね」というだけでは成り立たないというか。僕らが作っているのは音楽であり、芸術なので、しっかりとした筋を通しておきたいわけです。 『それぞれが自分にやれる最大限のことをやっているだけなんだと思います』 ――なお、「パラドクス 」についてはサウンドおよび曲調の面で、いわゆる歌謡ロック的な匂いを感じたりもいたしました。これもHOLLOWGRAMとしては、あらたな一面を切りだしたことになりそうですね。 Yumeji:なんかそうなっちゃってたんですよ、この曲は(笑) 一也:最初はもっとストレートな感じだったんです。ただ、作って行くうちに「これだと既にうちには近い曲があるな」ということに気付いてしまい、だったらいっそ昭和歌謡な方向に振り切ってみよう、ということで“こう”なりました。 Yumeji:でも、そのあとまたちょっと昭和感は薄まったよね? ryo:歌メロに関しては、またそこから僕が変えたんです。意識していたのは2000年代後半に入って生まれたボーカロイド文化で、テンポやメロディの切り替えが速いあのニュアンスを入れていったんですよ。でも、Cメロのあたりではレコードのことを指すような歌詞も入れてますしね。昭和感としては、そこにつながったとも言えます。 Yumeji:そうか、まさに「パラドクス 」っていうタイトル通りになったんだねぇ。 ――また、アルバムのテーマを音像から強く感じた楽曲としては「The deluge」のギターソロにコズミック感が醸し出されているように聴こえましたが、あのプレイは狙ったものだったのでしょうか。 Yumeji:あぁ、あのソロっぽくないソロですか。そして、別にあれは宇宙感を意識したわけでもありませんでした(笑)。曲を作った一也くんからもらったデモ通りにほぼほぼ弾いたものなんですよ。というのも、一也くんはもともとギタリストでしたからね。全て完成した状態だったので、僕はそれを1%か2%分くらいだけちょっとブラッシュアップしたくらいです。 ――「The deluge」はスケール感のある拡がりを持ったサウンドにもなっております。その質感をドラムで表現していく際には、どのような手法が必要だったのでしょうか。 Shinya:一也からもらったデモ自体の完成度がいつも高いので、その段階で大体のリズムのイメージはつかめていましたね。そこに僕が足し引きしながらこのかたちになったものを、また「一也センセイ、これでどうでしょうか?」って戻して(笑)、それを普通に叩いただけです。でも、叩いていた時の気持ちとしては確かにそのスケール感を大事にしていたところもありましたから、そういう風に聴いていただけたというのドラマーとしてとても嬉しいことですね。良かったです。 Yumeji:あとは、配信の方と比べるとアルバムのミックスの方がよりスケール感が出せた、っていうのもあるかもしれない。 ――なるほど、配信曲とアルバムに入ったものではミックスが違ったのですか。 Yumeji:だいぶ違います。だから、配信で聴いていた人もこのアルバムであらためて楽曲を聴き直してもらうと、また印象がちょっと変わってくる可能性がありますね。 ryo:実は、配信した曲を作っていた時と、今回のアルバムでは音を作って行くうえでの取り組み方や体制が変わっているんですよ。エンジニアさんも違うし、スタジオも違うので、ガラっと大きく変わったとはいかないまでも、聴けば微妙な感触の違いは感じてもらえるはずです。 ――「The deluge」も、歌詞は宇宙感を言葉としてちりばめたものとなっているようですが、こちらについても少し解説をいただけますと幸いです。 ryo:この詞で描いている宇宙感は、よりわかりやすいものになっていると思います。アルバム・タイトルともつながっていますね。歌詞的には人の認知を超えた先にも宇宙という世界は広がっていて、その境界を分つものが生と死、または既知と未知ならば愛を持って死の領域を知ることが、死を定められている生の肯定になる。という感じです。これにより、アルバムの他の楽曲が愛を歌うことを是としていく。そういった狙いです。 ――さらに、その「The deluge」の次に来るのが4曲目の「Flood of love 」となりますが、個人的には今作中で最も聴いていて面白いと感じたのがこの曲でした。1980年代に流行した、UK発のニューロマンティクスの香りを感じたせいかもしれません。 Yumeji:あぁ、僕も80年代の音楽とかニューロマ好きですよ。これは、まさにその方向性で作っていきました。そして、これもまた今までのHOLLOWGRAMだったら“絶対やらないシリーズ”に入ると思います(笑) ――曲数の多いフルアルバムだからこそ、具現化し収録することが出来た遊び心のあふれる楽曲であるわけですね。そうした一方、この作品を聴き進めて行くと中盤にはアコギの音が存在感を持つ「Paint in water color」や、叙情性の高い「柳暗花明」といった楽曲たちも出現してきます。言うなれば、それは聴き手の意識がさらに深いところまで誘われてゆく場面たちでもあると感じます。 ryo:その曲たちが持っているアティテュードというのが、アルバムの後半で発揮されて欲しいなという思いはありましたね。 ――「Paint in water color」の作曲者である一也さんからしてみると、このバンドの楽曲の中におけるアコースティックギターの担う役割については、どのようにお考えです? 一也:もともと自分がギタリストだったというのもありますけど、純粋に曲に合う音としてアコギが欲しくなることがあるんですよ。それで、この曲でも入れて欲しいですとお願いしました。 Yumeji:前の体制から今の編成に変わった時に、ただマイナス1になったという風には受け取られたくないって思ったのも、アコギを使うようになったひとつの切っ掛けだったかもしれないですね。とはいえ、実際に弾くとなると大変は大変です(笑) ――「Paint in water color」に関してはShinyaさんの金物やリムの使い方もあいまって、アコギの音がとても唯一無二な洗練されたものとして聴こえてきますよ。 Shinya:基本的には、それぞれが自分にやれる最大限のことをやっているだけなんだと思います。それを唯一無二と言っていただけるのは、ありがたいことですね。 『うちはなにしろ妥協したくない人たちが集まっているバンド』 ――厚みのあるバンドサウンドを奏でるHOLLOWGRAMももちろん素敵ですが、繊細な音が響く中では歌の聴こえ方もまた変わってきます。 ryo:僕は、ハイトーンヴォーカルではないですしね。曲によってはハイキーも出せるように努力はしてますけど、自分の持ち味という点では声の中に含まれているノイズだったり、倍音の成分がアコースティックな音の中ので歌う方が明確になりやすいという傾向があるので、声を張らずに歌って情感を表現することが出来る曲というのは、個人的にも非常に好きなんですよ。曲調に変化を持たせる為にアコースティックな曲や優しい曲をアルバムに収録しているわけではなく、好きだからやっていると言った方が正しいです。 ――そういえば、「Paint in water color」と「柳暗花明」も、テーマこそ違えど歌詞としてはどこかで繋がりがありそうですね。 ryo:「Paint in water color」は水彩画をモチーフとした詞で、子供達が黄色いバケツを持ってキャッキャ言いながら絵を学んでいくのと同時に、人と人との関わり方も学んでいくという内容だとすると、「柳暗花明」は人の心の移り変わりの模様を羽化して花を探す昆虫に喩えている詞です。 ――さすが。曲の並びがまた秀逸ですね。 ryo:時系列でいうと、「Paint in water color」は2年前に配布した曲だし、「柳暗花明」は今回のアルバムの中で一番最後に詞を書いたものなので、かなりタイムラグはあるるんですけどね。後者は今の自分が書くならこういう方向から物事を捉えるな、というのをかたちにしたものです。 ――かくして、今作『Pale Blue Dot』は、ここからいよいよ佳境に入っていきます。曲タイトルどおりにカオティックな世界がバーストする「誑人」は、その前の「柳暗花明」との激しいギャップに驚かされます。 Yumeji:ほんと狂ってますよねー(笑) ryo:「誑人」に関しては、作曲している段階から70年代のサイケっていうキーワードが出ていたんですよ。 ――あのコードのスケール感も、確かにイマドキはあまり聴かない雰囲気です。 Yumeji:曲を作った時は、配信するとかアルバムに入れるとか、そんなことはあまり考えてなくて、ライヴでやる時のことばかりを考えてたんですよ。最初はもっとオルタナティヴロックとかグランジっぽい方向もあったんですけど、今それをやっても面白くないし、自分らがやる必要もないと感じていた時に、一也くんと話しているうちに「ちょっと異国に行ってみようか」というアイディアが出て来たんですよ。 一也:中東方面にね(笑) Yumeji:そうそう。それで、あのアラビアンなスケールを入れたんです。 ――もはや、この音像は良い意味でカルトと呼んでもおかしくはないと思います。そこに「誑人」というタイトルがつくわけですから、HOLLOWGRAMの生み出す世界は奥深過ぎますね。 ryo:「誑人」というのは造語なんです。世をはかなんだりしてもそんなのは有益ではないよね、というスタンスの世捨て人というか。ちょっと世の中をバカにしている人物像をここでは書いてます。 ――それでいて、次の「遠鳴り」では再びピアノとアコギがフィーチャーされた湿度の高いサウンドと、文学的でさえある美しい歌詞世界が展開されていくことになるのですね。 一也:「遠鳴り」は去年の5周年のタイミングで配布した曲なんですよ。 ryo:タイトルを「海鳴り」にするのか、それにするのかで迷ったりもしたんですが、この詞は完全に私小説的なものですね。僕の父親が10年以上前に亡くなっているんですが、今もまだいたらこういう心境だろうなということを書いたら、湿度というか本当にしっとりしてしまったんですよ。それを悲しそうに歌うのではなく、穏やかに歌いました。 ――さて。実質的にこのアルバムのラストを飾るのは、10曲目の「With you 」です。こちらの曲は先ほどの「誑人」とはまた別の意味で、ライヴ映えしそうな仕上がりですね。 Shinya:この曲は、あのサビとかを叩いているとハッピーな気持ちになれます(笑) 一也:僕もこれはシンプルにロックっぽく弾きました。 ――さまざまなドラマがここまでに展開されてきただけに、救いを感じることが出来る曲でもあるように思いますよ。 Shinya:重い曲もあった中で、ここでパッと開ける感覚ですよね。 ――歌詞についても、「With you 」からはポジティヴな色合いを感じます。 ryo:これは、「パラドクス」と対になるものとして書いた詞なんです。 ――…!そうだったのですね!! ryo:「パラドクス」はアッパーな曲ですけど、そこに逆説的な内容の詞をのせていたんですよ。そして、「With you 」に関しては前半とサビでニコイチみたいなつくりになっていて、前半はけっこう支離滅裂なんですよ。だけど、サビで前半までで歌っていたことを“引っ繰り返して”いるんです。ロックで王道的な曲にのせながら、君のそばにいるのは君の心だからそれに掌をあててね、っていう柔らかい詞でまとめました、というのがオチになっているわけです。 ――なんとも複雑で巧妙なつくりです。11曲目のSE 「- primitive ocean -」で締めくくられることにより、『Pale Blue Dot』はやがて完結していきますが…今作はシネマティックな要素も持ったアルバムになりましたね。聴き終わった時には、芸術性とドラマ性に彩られた映画を1本見終わった時のような感覚を得た次第です。 ryo:ありがとうございます(微笑)。HOLLOWGRAMにとっては初めてのフルアルバムということで、難しかったり大変だったこともいろいろありましたけど、うちはなにしろ妥協したくない人たちが集まっているバンドですからね。ヒーヒー言って苦しみながらの制作ではあったものの(苦笑)、こうして作品がカタチになってみると「これだけのものを作れて良かったな」と本当に思いますね。やっと出来ました(笑) ――時代の風を読みながら配信で曲を発表していくことも積極的にトライしていく一方で、アーティストがアルバムというものを制作して世に出していくことの意味と意義も、HOLLOWGRAMはこの『Pale Blue Dot』であらたに証明したのではないでしょうか。 Yumeji:そう言っていただけると、ほんと助かります(笑) 『誰も知らないその先の世界まで行ってPale Blue Dotを見つけましょう、というのが今回のツアーの主旨ですね』 ――ところで。ここからは3月28日のShibuya Womb 公演まで続く[HOLLOW GRAM Tour2020 ”Into Black II” ]にいそしんでいく日々になっていくことになるのだと思われます。6周年を経てのライヴバンド・HOLLOW GRAMが、いかなる世界を呈示してくれるのかも実に楽しみです。 ryo:ツアータイトルの中の“Into Black”には、宇宙空間に向かうという意味を込めてあるんですよ。誰も知らないその先の世界まで行ってPale Blue Dotを見つけましょう、というのが今回のツアーの主旨ですね。 Yumeji:ライヴはナマモノですから、曲たちが変化していったり、育っていったりするんじゃないかなという予感はしていますけど、それが“その先”でどうなるのかはまだ僕らもわからないですし、僕らのコントロールの範疇外でもありますからね。そこの予測外な部分を自分も楽しんでいきたいです。

2020年2月12日 RELEASE / 5th Album
『Pale Blue Dot』

収録曲
01. - pale blue dot-
02. パラドクス
03. The deluge
04. Flood of love
05. Blind Watchmaker
06. Paint in water color
07. 柳暗花明
08 .誑人
09. 遠鳴り
10. With you
11. -primitive ocean-

詳細
HLGM-008 / ¥3,000(tax out)

HOLLOWGRAM 6th Anniversary Oneman
『Holographic Principle』

2020年01月19日(日) 東京 Shibuya Space odd

HOLLOWGRAM Tour2020
『Into Black II』

2月11日(火/祝) 東京 池袋EDGE
2月15日(土) 神奈川 Music Lab.濱書房
2月16日(日) 埼玉 浦和ナルシス
2月22日(土) 広島 広島BACKBEAT
2月23日(日) 福岡 DRUM SON
2月24日(月/祝) 岡山 岡山IMAGE
2月29日(土) 長野 長野J
3月01日(日) 新潟 新潟GOLDEN PIGS BLACK
3月07日(土) 大阪 心斎橋BEYOND
3月08日(日) 愛知 今池CLUB UP SET
3月15日(日) 宮城 仙台enn3rd
3月20日(金/祝) 北海道 札幌CRAZY MONKEY
3月21日(土) 北海道 札幌CRAZY MONKEY

【ツアーファイナル】
3月28日(土) 東京 Shibuya Womb
ryo (Vocal) | HOLLOWGRAM
夢時 (Guitar) | HOLLOWGRAM
一也 (Bass) | HOLLOWGRAM
Shinya (Drums) | HOLLOWGRAM
ryo (Vocal)
夢時 (Guitar)
一也 (Bass)
Shinya (Drums)