COVER ARTIST / Crack6

ViSULOG 2019年5月号 COVER ARTIST / Crack6

INTERVIEW / Crack6

PENICILLIN Gu.千聖(MSTR)によるソロ・プロジェクトCrack6が待望のシングル『カナリア』をリリースした。
今作は大方の予想を裏切り、『カナリア・シリーズ第一弾』と銘打たれたコンセプト作品の幕開けを歌った一枚だ。
一人の少女「カナリア」はどんな物語を奏でていくのか、そしてこの物語を今後どのように仕掛けていくのか、MSTR本人が赤裸々に語ってくれた。

取材・文:二階堂晃
『今回は起承転結でいうところの『起』と『承』の途中まで』 ――純粋なCrack6名義としては久々となるシングル『カナリア』は、まさかのストーリー仕立ての作品となりました。まずは、その経緯から聞かせて下さい。 MSTR:Crack6としてこれまでにもたくさん作品は出してきたけど、毎回テーマに一番困るんだ。曲やサウンドに関しては色々と試行錯誤するプロセスを楽しみたいと思っているけど、詞に関しては制作期間中に主旨を右往左往させたくなくて最初にバシっとテーマを決めてしまいたかった。そこで『ロミオとジュリエット』の物語をCrack6なりに表現したいな、と思って今回の『カナリア』を作ることに決めたんですよね。 ――世の中に数ある物語のモチーフの中から『ロミオとジュリエット』に着目したのは何故なのでしょうか? MSTR:まず、2015年にリリースしたミニアルバム『Change the World』のテーマが自分自身のことについても含めて「生と死」というもので、とても壮大でヘヴィな作品だったんだよ。“命”というテーマはやはり重いものになるじゃないですか? そこから、翌年に出したアルバムの『薔薇とピストル』では、人生の美しい部分(薔薇)と苦しい部分(ピストル)の対比というものを表現したんだけど、テーマとしてはこれはこれで幅広いものだった。じゃあ次は? となった時にもっとミニマムな世界ついて描きたいと思ったんだ。 ――そこで出てきたのが『ロミオとジュリエット』だったと。 MSTR:そうだね。そういう一人か二人の物語をCrack6としてやってみたらどうだろうっていうチャレンジ。映画やアニメであれば主人公と登場人物がいてミニマムな部分からスタートするじゃない? 俺にとってはそういう切り口の方が難しくて、実は今まであまり手を付けて来なかったんだよね。 ――今作は『カナリア・シリーズ第一弾』と打ち出されているということは、ここからさらなる物語が広がっていくと考えていて良いのでしょうか? MSTR:あまりにも自分の中でストーリーが広がりすぎてしまってシングル1枚だと雑になっちゃいそうだったから、今回は起承転結でいうところの『起』と『承』の途中まで、といったところだね。 ――ということは収録の「カナリア」「アオイユメ」「Rain Dance」の3曲はストーリーの時系列順、ということでしょうか? MSTR:それがそうでもなくて、時系列としては順番通りではないんです。リード曲の「カナリア」は、これから続く何部作かはまだ分からないけど、物語全体を通した「テーマ曲」っていう位置付けです。 ――なるほど、映画でいうところの主題歌の役割を果たす曲なのですね。 MSTR:そう。全体を統括するテーマソングが「カナリア」だね。そもそも、“眠りにつく日 キミの目に 僕は映るの?”っていう風に、人生の終末についてもここで歌ってるわけですよ。ただそれが物語としてのエンディングなのか、作品としての問題提起なのかも、まだまだこれからだけどね。この物語の主人公はカナリアという名前の少女であり、ジュリエットになるのかな。だから、時系列でいうと物語本編としては事実上は「アオイユメ」が1曲目という形になると思う。 ――「アオイユメ」の歌詞は激情と言ってもいい、強い言葉が印象的です。 MSTR:「アオイユメ」で描いたのは、まだまだ恋そのものに憧れているような、子供の恋模様だからね。まだまだ親元も離れていない子供の時期のカナリアについて歌っているし、クサイ言い方をしちゃえばありがちな青春の1ページみたいなものだよ。自己満足に近い一方的な愛をカナリアと恋の相手でお互いにぶつけあってるっていう内容だね。それが交わっているかどうかは微妙だけど、だからこその若さゆえの恋の美しさっていうものもあるのかなとも思うし。 ――そう聞くと、“過ちのFake!!”“悲しみのFake!!”というフレーズがとても意味深に感じられますね。 MSTR:それ、別のインタビューでも言われたよ(笑)。やっぱり印象的な部分なんだろうね。「アオイユメ」の場合は、「カナリア=ジュリエット」よりも男役のロミオの方がちょっとヒドいヤツな印象はあるね。ちょっと女の子のことを言いくるめて自分の都合の良いようにしちゃってる感じとか。ちなみに、「カナリア」に出てくるロミオと「アオイユメ」に出てくるロミオは別の人物かもしれないってことは意識してもらえると嬉しいかな。 ――そして、そんな若さゆえの恋愛劇は「Rain Dance」へと続くと。 MSTR:多分、この二人は上手くいかなかったんだろうね(笑)。「Rain Dance」はもう、カナリアの悲しみの絶唱だよね。もはや愛憎。いわば“LOVE & HATE”とでもいうか。 ――何故、これから始まる物語の序章で若くて荒々しい悲恋を描こうと思ったのですか? MSTR:自分自身が最近そういう恋愛をしてないからじゃないかな?(笑) こういう出来事って、若い時期じゃないと出来ないイメージ。恋愛に限らず、物事においてその年代ならではの考え方、その年代ならではの一人よがりみたいなものがきっとあると思っていて。いつがそのスタートラインかは人それぞれだと思うけど、人間なら誰しも通る道なんじゃないかなって思うよね。 『ライヴっていうのは、いつであっても磨かれた状態の刀じゃないといけない』 ――そんな人生の最初の時期の初期衝動を描いているからこそだと思いますが、『カナリア』収録の3曲は全曲ハードな仕上がりですよね。 MSTR:そうだね、特にライヴを意識して作ったこともあって、今回は全曲ワッショイ系(盛り上がり系)だね。とは言え、この間、タワレコのインストアイベントでアコースティックバージョンの「カナリア」を披露した時に感じたんだけど、全然もっとメロウな雰囲気のアレンジに仕上げることも出来たんだよね。「アオイユメ」だってあんな曲調とは言え実はメロディはすごく切ないし、「Rain Dance」ですらアコースティックで決して演奏出来ない曲じゃないからね。ライブのためにハードに仕上げたという感じかな。 ――それでもなおライヴ映えを重視した仕上がりになったのは、やはりここ近年Crack6として特に精力的にライヴの本数をこなしていることと関係はありますか? MSTR:俺の根底にある感覚として、「ライヴをやって初めてその曲が羽ばたく」というものがあってね。もし自分がベートーベンやモーツァルトみたいな音楽の天才だとしたら、ちょっとくらい音楽から離れていた時期があったとしても、パッと披露した時でも自分の100パーセントに近い状態でその曲たちの良さが出せるかもしれない。でも俺はそうじゃないからさ。いざという時に良いコンディションでいるためには常に戦い続けていかなきゃならない。例えば自分が戦士だとしたら、闘っていくにあたっては練習だけじゃ全然ダメ。実際に命懸けで闘うことだけで習得できる緊張感や間合いみたいなものって絶対にあるから。そういう点では、武道にもミュージシャンにも共通したものがあると思うんだよね。ライヴっていうのは、いつであっても磨かれた状態の刀じゃないといけない。 ――なるほど。 MSTR:やはり緊張感を持って人前に立ち続けないと、良い曲も生まれてこないと思うんですよね。それに緊張感という話になると、締め切りの緊迫感があるからこそ曲も生まれて来るというか。一度締め切りを決めずに制作したこともあったけど、俺の場合はそれではダメっぽいです、少なくとも今の自分にとっては(笑)。「カナリア」なんて、お風呂に入ってる時に曲が出来たくらいだから。それくらい、日常の中で常に物事を進めていく感覚が自分にとっては大切だなって思う。 ――常にご自身をオンの状態に置き続けているのですね。 MSTR:「Rain Dance」だって、もう疲れ切って家のソファに倒れ込んだ時にふと思いついてそのまま書いた曲だからさ。大げさな言い方をすると自分を追い詰めた先に生まれる感覚を大事にしたいから、俺は自分がなまくらにならないようにライヴをやり続けるし、同じやるからには新鮮な気持ちで応援してくれてるファンの人たちと向き合い、そしてそれを共有したいから新作を出し続けたいし。そういう意味では、比較的短いタームで新作を発表しやすいのが音楽の良さではあるよね。 ――と、いうのは? MSTR:これが映画や演劇だったら、さあ脚本を書いて、さあたくさんのスタッフとキャストを集めて、稽古をして、舞台セットを作って…って大掛かりな話になってくるじゃない? でも音楽であれば、もちろん演出やらその他の付随してくるものはあるにせよ、一番大事な部分はそういった他の文化よりもスピーディーに形に出来る。そういう、常に自分を光らせておくための瞬発力みたいなものは大事にしたいよね。 『この形こそが時代とか関係なく自分のスタイル』 ――PENICILLIN、Crack6両方の形で長く音楽の道を生きてきたことの秘訣はまさしくそこにありそうですね。 MSTR:さらにそれに付け加えるなら、オールドスタイルとトレンドとのバランス感覚っていうものも人それぞれ。どんなものでも、「流行」になった瞬間にダサくなっていくからね。例えばファッションの世界では、あるアイテムが一般的に流行った段階で、それが「もう古いね」って言われる日がいずれやって来ることは最初から決定されてる。それに対して、その時々で常に新しいものに自分を合わせて変えていくのか、「いや、自分はこれが似合うから」ってそのスタイルを貫くかは、人それぞれによるよね。音楽も、長く続けてくるとそれとまったく同じことに必ず直面するんだよ。 ――Crack6 MSTRとしても、PENICILLIN 千聖としても、どの時期においても常に多彩な音楽性を発信し続けて来られたそのバランス感覚はどこにあるのでしょうか? MSTR:良い質問だね。昔は情報が限られていた分、俺もCDショップに通い詰めて気になるアーティストの音楽を片っ端から試聴していたけど、今の時代はネットでサブスクリプションでも何でも簡単に音楽が聴ける分、当時みたいな「やっと聴けた!」っていう感動は感じにくい時代だよね。 ――おっしゃる通りです。 MSTR:だからこそ、自分の根底にある素直なものをその時その時で上手にプロデュースしていくことが大事だと思う。こないだ、モトリー・クルーの新譜を聴いたんだけど昔とスタイルがちっとも変っていなくて、だけど今の方が彼らはカッコいいんだよ。メンバーも年齢を重ねた分、それはそれのセクシーさを醸しててイイ感じだしね。ミュージシャンにとって一番必要なことは、自分に似合った形で常にチャレンジを続けて行くっていうことなんじゃないかな。 ――という話になると、昨今のロック・ミュージックのトレンドに逆行するかの如く、『カナリア』収録の3曲ともギターソロが見せ場としてあることにMSTRのミュージシャン、ギタリストとしての信念を感じますね。 MSTR:そうだね。俺にとってはこの形こそが時代とか関係なく自分のスタイルであり、求められている表現だと思っているからさ。トレンドに対して自分らしさをいかにブレンドしていくかっていう挑戦を、これまでにもたくさんの先駆者たちが成し遂げてきたし、俺自身も常にそうでありたいと思っているよ。 『頑張ってみることは、後々の自分に必ず大きな学びと経験として残る』 ――ここから『カナリア』の物語がどう展開していくのか、どうしても気になってしまいます。 MSTR:彼女がこれから生きていく中で色んなことがあるんだろうなあって予感はしている。今回が起承転結の「承」の途中で、ここからどう「転」へと繋がっていくかってところだから。「結」の部分に関してはまだ自分の中でも見えてはいないしね。 ――となると、Crack6のライフワークの一つとして『カナリア・ストーリー』が繋がれていくことになりそうですね。 MSTR:ライフワークなんて言うと大げさだけどさ、少なくとも今年から来年にかけてはこのテーマで進んでいくのが面白そうだよね。さっきも言ったように、生きてるうちは新しいことに挑戦して闘い続けたい。俺の人生のスパンという視点で考えるとこの1~2年なんて大した長さじゃないから、楽しんでチャレンジするよ。このテーマを成功させるために頑張ってみることは、後々の自分に必ず大きな学びと経験として残るからね。 ――絶賛敢行中の『カナリア』のリリースツアーも見逃せませんね。 MSTR:これまでのCrack6のライヴの流れに対して、程よい具合に新たなパズルのピースが加わっていくツアーだね。『カナリア』は一つのストーリーを表現していく作品だけど、曲そのものとしては全部ライヴを意識して作ってるから今のレパートリーに組み込んだ時のマッチングもバッチリだよ。 ――Crack6のライヴの熱量がますます強くなりそうで期待大です。 MSTR:これまでの曲だって、みんな聴きたいでしょ(笑)? 全箇所、ガッツリ盛り上がりに来て欲しいね。

RELEASE

2019年6月19日(水)
コンセプトシングル Release!!
『カナリア』


<初回盤>
SRPM-2005 / ¥2,000 (+Tax)
豪華ブックレット(16ページ)付き
[収録曲]
カナリア / 他1曲(全2曲)
[発売元]
shelva records / DUPLEX DEVELOPMENTS JAPAN inc.
[販売元]
PCI MUSIC

<通常盤>
SRPM-2006 / ¥1,500 (+Tax)
[収録曲]
カナリア / 他1曲(全2曲)
[発売元]
shelva records / DUPLEX DEVELOPMENTS JAPAN inc.
[販売元]
PCI MUSIC

LIVE INFORMATION

『カナリア』release tour

2019年06月15日(土) SHIBUYA REX <CLUB NEO 限定LIVE>
2019年06月22日(土) 西川口 LIVE HOUSE Hearts
2019年06月29日(土) 名古屋 ell SIZE
2019年06月30日(日) 大阪 RUIDO
2019年07月06日(土) 渋谷 TSUTAYA O-WEST

Crack6 2マンライヴ「Notice of Arrival」-Do you savvy?-

2019年07月28日(日) 渋谷チェルシーホテル

PROFILE

Vo.& Gu. MSTR | Crack6
Vo.& Gu. MSTR